第5章 glass heart【赤葦京治】
「たこ焼きとかいいなぁ。あ、でも暑いからかき氷も食べたい。赤葦さんは?」
「メシ系もいいけど、りんご飴食べたいかな」
「りんご飴?意外!」
「そう?こういう時じゃなきゃ食べられないし。結構好きだよ」
「赤葦さん可愛い~!」
「…何かバカにされてる?」
「まさか!ギャップ萌えです!」
ギャップ萌え…?って、こんな大の男に対しても使うものなのだろうか?
そこの真偽はよくわからないけど…。
楽しそうに笑ってる姿を見ていたら、まあいいか、と思えてきた。
「あ、たこ焼きあったね」
遠目からでも、たこのイラストでそれとわかった。
少し離れた場所にちょうど座れるような場所を見つけ、そこで食べながら花火を見ようということになる。
「汐里、どこかで座ってていいよ。俺買ってくるから」
「ほんとですか…?じゃあ、席取っておきます」
「うん」
履きなれない下駄ではきっと足が疲れる。
たこ焼きを買う間くらい、別行動でも大丈夫だろう。
そんな風に考えていた俺は、数分後後悔する。
目当てのものを買い汐里が待つはずの場所に戻ったはいいが…。
「…どこ行ったんだ?」
周りを見渡しても汐里らしき人影は見つからない。
花火が開始するまで30分を切り、辺りは混雑が増してきた。
スマホを取り出し、汐里に電話する。
「出ない…」
数回コール音が鳴るものの、すぐに留守電に切り替わってしまう。
マズイな…花火が始まったらますます人でごった返しそうだ。
既にこんなに混み合っている中で人ひとり見つけ出せる気はしない。
やはり連絡が取れないことには厳しいか…。
少し道の端に寄り改めて立ち止まる。
するとちょうどそこへスマホの振動が手に伝わってきた。
この喧騒の中では、着信音に気づくのすら困難だ。
画面には汐里の名前。
取り合えず連絡がついたことに安堵しつつ、電話に出る。
「汐里?どこ行った?」
『ごめんなさい、変な男の人に絡まれて…』
「えっ…、大丈夫?」
『はい、何かお酒飲んでるみたいでしつこくて。でも、……わ、ヤバ。まだ追いかけて来るっ!』
「汐里?ちょ、どこ!?」
『えっ…と…焼きそばの屋台の…、』
そう聞こえたところで、通話は途切れてしまった。