第5章 glass heart【赤葦京治】
汐里の次の反応を窺っていると、横から静かな声が挟まれた。
「月島、言い過ぎ」
汐里に助け船を出したのは、赤葦さんだ。
思わず言葉に詰まる。
「優しいなー、赤葦さんは!ツッキーと違って!!」
煽るようにそんなことを言う汐里にも苛立つ。
そうだよね、確かに優しい。
僕は赤葦さんのようにスマートに優しくなんて出来ない。
汐里がこの人のそういうところを好きになったこともわかってる。
赤葦さんは…僕にないものを持ってるよ。
胸に広がっていく黒いものは、嫉妬と劣等感。
今の僕は、赤葦さんの顔すらまともに見られない。
そうこうしているうちに、別の話題に移った汐里と梨央さん、それから赤葦さん。
その輪の中に入るつもりもないから席を立った。
隣のテーブルに置かれたままのリキュールを使って、カクテルを作る。
少し強めにしよう。
いいのか悪いのか、アルコールに酔うなんてことは滅多にないけど…。
でも今は、弱い酒を飲む気分になんてなれない。
元いたソファーに赤葦さんの姿はなかった。
店内を見回してみれば、窓際で電話している最中だ。
ついでに梨央さんもコーヒーを淹れるためいなくなっていて、テーブルの隅、汐里と二人きりの空間になってしまう。
「…何か作ろうか?カクテル」
「え?あ…ううん。大丈夫…」
沈黙を埋めるような会話。
グラスを両手に包んだまま、汐里も居心地悪そうにしている。
そんな中、「あ…っ!」と何か思い出したように声が上がった。
「この前ね、光太郎さんちで撮った写真を職場の先輩に見せたら、ツッキーのことカッコイイってなってね?」
「…はぁ」
「紹介してって言われちゃったの」
「……」
何、それ…?
「一回会ってみない?」
「……やだよ」
何で汐里に他の女を勧められなきゃいけないワケ?
「でも彼女いないんでしょ?会ってみるだけでもダメ?結構本気でお願いされちゃって。すごくいい人なの」
いい人とか…そういうことじゃないよね…。
ほんと鈍感、無神経……。