第5章 glass heart【赤葦京治】
予約時間いっぱいまでバレーに集中した僕たち。
空腹を抱えていつものカフェへと向かう。
本来定休日のところを、店長サンが今日の集まりのために開けてくれた。
テーブルに所狭しと乗せられた、食欲をそそる料理。それから多種類のお酒。
木兎さんや灰羽は、高校生だったあの頃と負けず劣らずの食べっぷりだ。
見てるこっちが胃もたれしそう…。
元々夜あんまり食べるタイプじゃない僕は、ソファ席の端で細々とアルコールを口にする。
「よかったら、アップルパイ食べませんか?」
テーブルの上のお皿が程々に空になった頃。
そんな声とともに、梨央さんがカットしたデザートを運んできた。
「おー!食べる!食べる!うまそーっ!」
「あっ!木兎さん、一人一個ですよ!」
胃袋高校生級の二人は料理だけでは足らず、アップルパイまでもを取り合っている。
まだ食べるの?
胃の構造どうなってんだろう…?
「美味しい…!アップルパイって難しそうなのに、梨央さんすごい。さすがプロですね」
「生地から作ると確かに手間掛かるけど。市販のパイシートでも簡単にできるんだよ」
「本当ですか?私不器用だけど、出来るかな?」
「よかったらレシピ書こっか」
「はい、ぜひ!」
真向かいの席でそんなやり取りを始めた汐里と梨央さん。
何の気なしに顔を上げると、汐里と目が合ってしまった。
無言でそれを逸らすのも気まずいし、かと言って憎まれ口意外の言葉は浮かばない。
「汐里、相当不器用ですよ?」
結局、いつもどおり。
ただ、汐里に向けてではなく梨央さんに向けて。
ほんの少し逃げ腰な自分に呆れる。
「もう、またそういうこと言う!作ってもツッキーにはあげないから!」
正面からぶつかってくるのは、むしろ汐里の方だ。
前なら汐里のこんな気の強いとこが面倒くさかったはずなのに…。
今日は、普段どおりでいてくれることがありがたい。
「こっちから遠慮するよ。お腹壊すと嫌だし」
出会った頃からの、僕たちのやり取り。
こんなことでヘコタレる汐里じゃないから、僕も言い返す。