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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



驚愕で早くなったのであろう鼓動を落ち着けるように、胸に手を当てている。
その顔はふと僕を見上げ、安堵のためか、力なくゆるりと綻んだ。



「ありがとう、ツッキー」



思わず錯覚する。
僕と汐里との間には、溝を作るような出来事など何もなかったのではないかと。

でも、僕が汐里に嫌われる程のことを言ってしまったのは紛れもない事実。
既に嫌われてしまったのであれば、どう取り繕っても仕方がない。
もはや諦めの境地で、いつもどおりを貫く。


「誰かさんに見とれてポーッとしてるからでしょ?」


汐里の視線がずっと赤葦さんを追っていたのはわかってる。
そんなに熱っぽく見つめてたら、この場にいる誰もが君の気持ちに気づいちゃうんじゃない?ってくらい。


「……!してないし!どうしていつもそんな嫌味言うの?」


「嫌味じゃない。事実」


取り合えず、普段どおり口答えしてくる汐里に少しホッとした。
無視されたり口ごもったり、僕を避けるような態度を示されたらこの場すら凌げない。





「ごめんっ!!大丈夫か!?汐里!」

「大丈夫です」

「ホントにホントか!?」

「ホントにホントです!」

「マジ焦ったわ…。あ、ツッキー交代な」

「はい」

慌てふためいて駆け寄ってきた木兎さんに会話は遮られ、彼と交代にコートへ入った。


今日、久しぶりにバレーできることを少なからず楽しみにしていた。
それなのに、そこだけに集中できない。


人に嫌われることなんて、これまでの人生でさほど気にしたことはなかった。
自分のことを性格のいい人間だなんて思っていないし、特にそれを不便に思ったこともない。
むしろそれを理由に避けてくれれば、余計な人付き合いをしなくて済むし好都合なくらいだった。



でも、汐里はもう…
嫌われても構わない、なんて思える存在じゃない。


とは言え、こんな時どうすればいいかなんてわからない。
ただ汐里との妙な距離感を黒尾さんたちに悟られたら面倒くさい。
今夜この場だけでもいつもどおりに振る舞うくらいのことしか、僕には考え付かなかった。


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