第5章 glass heart【赤葦京治】
「デート!?えっと…デート…になるんですかね?」
「男女が二人で出掛けること、デートって言うんですけど。知らなかった?」
「いえ…知ってました。でも、片想いなのにいっちょ前にデートって言葉を使うのには抵抗ありまして…」
「何だよそれ。他のことはハキハキしてんのに、ほんと赤葦に関しては乙女だな」
「あ、バカにした!」
「してねーよ。上手くやってこいよな?たぶん汐里の乙女なとこ、赤葦なら可愛いと思ってる気がする」
「な…、嘘!」
「男に媚びない女が自分にだけ女らしいとこ見せるってのはさ、なかなかクルもんがあんだって」
「……そういうもんですか…?」
テツさんが言うと、何だか妙に説得力があるから不思議だ。
「あ。上手くやれっつっても、考えすぎんなよ?ただ楽しんでこればそれでいんだから」
「はい…。楽しんできます」
こんなチャンス、二度とないかもしれない。
そりゃ頑張ろうって決めたけど、頑張ったって実を結ぶとは限らないのが恋愛だから。
私を沢山見てもらって、知ってもらって、もう少し赤葦さんの近くに行きたい。
私の知らない赤葦さんも、もっともっと知りたい。
後悔しないように。
私の人生の中で、赤葦さんへの恋は確実に大きな経験。
この恋が最後にどうなっても、赤葦さんを好きになって良かったって…、そう思いたい。
気持ちを新たにした、私の恋。
赤葦さんとのデートが待ち遠しくて、それからの毎日は、一日一日がとても長く感じられた。