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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



え…?

もしかして、トスって、これのこと…!?


「合宿の日程くらい把握しとかないと、チームの皆さんに迷惑がかかりますよ?」

「ああ、だよなぁ!気を付ける!」

「じゃあ、今年は無理ですかね…」

小さくため息をつき、グラスに手を掛ける赤葦さん。
中のアルコールに口をつけようとする間際、私は勢いに任せ彼の動作を止めた。



「あっ…、赤葦さんっ!!」



突然声を張ったからか、その目の輪郭は明らかに大きくなる。


「…何?」


自分自身に躊躇う隙を与えないうちに、この勢いのまま…


言ってしまえ…!



「私と二人じゃ、ダメですかっ!?」



が……


頑張った、私…!!



心臓がとてつもない速さでリズムを打っている。
店内は程々に人の声が飛び交っているというのに、自分の心音ばかりが耳について仕方がない。


少しの空白のあと、赤葦さんの口の端がほんのりと持ち上がるのが見えた。



「ダメじゃないよ。行こうか、二人で」



私の欲しかった言葉と共に返される、綺麗な声。



嘘…嘘、嘘…
本当に…?

赤葦さんと二人で、花火行けるの…?



「車だと渋滞はまりそうだから、電車のがいいね」

「そ…ですね…」

「いーじゃんいーじゃん!楽しんでこいよ!」

呆然としたまま光太郎さんに目を向けてみれば、まるでそこには後光が射しているように見えた。
赤葦さんがよそを向いている間に、白い歯を見せてニンマリ笑ってくれる。


光太郎さん…いや、光太郎兄さん!
もはや神…!!


きっと以前の光太郎さんなら、「せっかくだから二人で行ってこれば?」なんて促してくれた気がする。
でもきっと、それじゃダメだって教えてくれたんだ。
赤葦さんのことになると、あまりにもグダグダな私。
ちゃんと自分自身で頑張れよ、ってことだと思う。


こうして背中を押してくれる光太郎さんにも、いつも愚痴を聞いてくれるテツさんにも、本当に本当に感謝だ。







赤葦さんと花火に出掛けられることを思うと、フワフワ気持ちが落ち着かない。


家へと帰る電車の中で。
入浴剤の香りが立ち込めるお風呂の中で。
滑らかなシーツと柔らかなベッドの中で。


その日を思うほどに私は…
夢見心地の中で揺れていた。


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