• テキストサイズ

フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



薄暗い店内。
高い天井から灯される落ち着いた色のダウンライトと間接照明のおかげで、しっとりとした雰囲気がある。

いつもここで一緒に過ごすのは、テツさんか光太郎さん。
だからこの空間にムードがあろうがなかろうが、あまり気にしたことはなかった。
でも今夜は、この店内の空気が私を更なる緊張へと追い込んで行くような気がする。


広いお店ではないため、特徴的な光太郎さんのムササビヘッドはすぐに見つけられた。
その向かいに腰掛ける、緩いウェーブの黒髪も……。


スタッフの女性に声を掛けられ、私は光太郎さんたちが座る四人掛けのテーブル席へ。


「こんばんは!」


たぶん、いつもどおり笑えているはず。
笑顔を準備した私へと、二人の視線が向けられた。


「お!来た来た!何か久しぶりだなぁ、汐里!」


「お疲れ」


赤葦さんは私を見上げたあと、自分の隣の椅子を引いてくれる。


「お疲れ様です」


そうだ…平日のこの時間。
赤葦さんだって仕事帰りなワケで…。

スーツを脱いだ、ワイシャツ姿。
ネクタイを緩めていないところが彼らしい。
初めて見る赤葦さんのオフィススタイル。

この店の雰囲気と掛け合わせると堪らなく色っぽくて…

何か、息がしづらいんですけど…!


引いてくれた椅子に腰掛け、意識的に大きく呼吸する。

「何飲む?腹も減ってるよね?」

メニュー表を二つ手渡してくれる赤葦さんに小さくお礼を言って、黒い印字に視線を落とした。


お腹空いてる…けど。
赤葦さんの隣で食べられる気がしない。
きっと、喉を通らない。
比喩的なアレじゃなくて、本当に言葉のまんま。
何か喉ごしのいいもの、ないかな?冷奴とか。
…いやいや、ここ洋風のバーだから。そんなもんないってば!
あ、リゾット…って、雑炊みたいなやつだよね?
これにしよう、そうしよう!

「えっと…トマトのリゾット、と…ファジーネーブルを」

「オッケー」

赤葦さんがそれを頼んでくれたあと、お酒だけはすぐにテーブルに届いた。


三人で会話…というより、主に光太郎さんが近況を面白おかしく話してくれるから、こちらとしては助かる。
赤葦さんと交代で突っ込んだり、スルーしたり、茶々を入れたり…そんな風にしていれば、徐々に緊張も解れてきた。


/ 680ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp