第5章 glass heart【赤葦京治】
水分を摂りつつ休憩していれば、テツさんの具合もだいぶ落ち着きを取り戻す。
「さあ、動くか!」と伸びをしながら立ち上がった背中に向かって、私は静かに告げる。
いっぱい考えて、心に決意したことを。
「テツさん。あのね…、決めました」
「……告白すんの?」
「はい」
「そっか」
いつまでも同じ場所で足踏みして、燻っていた。
好きな気持ちだけあればそれでいい、とも思ってた。
だけど、何よりこの状況が辛くなってしまったのは私自身。
この前ここを訪れた時の、赤葦さんとの距離感。
あれが、もうギリギリ。
これ以上好きになったら、欲しくて堪らなくなる。
きっと遥さんが憎らしくもなる。
というか、既にそんな感情が心に芽生えつつある。
今以上に醜い自分になるのも怖い。
私じゃダメだって、赤葦さんに言ってもらう。
この気持ちを諦めさせてもらう。
嫌な役をさせて申し訳ないと思うけど、私ももう、いい加減苦しい。
「スゲェな、汐里は…」
「えー?まだ何もしてませんよ?」
「そう決めただけで、スゲェって」
「そうかな…。…当たって砕けてくるんで、慰めてくれます?」
「おう、任しとけ」
控えめに笑いながら、頷いてくれるテツさん。
さっきまでグロッキーだった姿が嘘みたいに、その存在は頼りになる。
私も立ち上がり、大きな体に歩み寄った。
「次、どこ行きます?」
「お化け屋敷入っちゃう~?」
「嫌っ!めちゃくちゃ怖かったって言ったでしょ!?」
「だからだろ。汐里がビビってる顔、ウケそー」
「性格悪っ!」
「今更?」
軽口を叩き合いながら、陽が落ちてきたパーク内を二人歩く。
次にここを訪れるのはいつだろう。
きっと、赤葦さんを忘れる日が来るまでは無理だろうな。
そんなことを思えば、胸に物悲しさを抱えずにはいられなかった。