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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



一瞬、考えるようにして黙ったテツさんに一抹の不安を覚える。
けれど改めてこちらを見る瞳は、いつもの面倒見のいいお兄さんに戻っていた。


「行くか?デート」

「いいんですか?」

「いーよー。どこ行く?」

「あ、じゃあ遊園地どうですか?最恐ジェットコースター乗りたい!」

「俺そういうのは無理でーす。酔っちゃうー」

「弱っ!」


ワイワイ盛り上がりながらカフェを出た私たちは、そのまま駅の構内へ入り電車に乗り込んだ。
なんだかんだ折れてくれたテツさんと共に向かうのは、数週間前にも訪れた遊園地。
丸一日楽しむのは無理だけど、いい気分転換にはなるはず。



と、思ったんだけど…。


着いて早々、立て続けに二つジェットコースターに乗ったところで、テツさんは白旗を上げた。


「大丈夫ですか?」

「ギブ…」

大きな体をベンチにグッタリと預け、項垂れている。
心なしかトレードマークのトサカ頭も萎びている気が…。

「酔っちゃうなら無理に付き合ってくれなくてよかったのに」

「いや…何かスカッとしたくてさ…」

「はい?」

「なんもねぇ…」

「お水買ってきます」

「わりぃ。頼む」


少し離れた売店まで足を運び、冷えたミネラルウォーターを一本買う。
テツさんの元へ戻るため歩いていると、あのお化け屋敷が目に付いた。
同じ場所に設置された、ジェラートのお店も。

赤葦さんと過ごした休日が、脳裏に蘇る。





「お待たせしました」

「あー、サンキュ。てか何、それ?」

「ジェラートです。食べます?」

「いらね。つーか、グロッキーな人間の横で呑気にジェラートかよ!」

「だってテツさん復活するまでの間、暇だし」

「おうおう、悪かったな。…あれ?お前いつもバニラとか食ってんのに、珍しいな。何味?それ?」

「メロンですよ。この前赤葦さんが食べてるのもらったら美味しかったんで、リピートです」

「へえ?楽しかったんだな。よかったじゃん」

「はい…」


楽しかった。
いい思い出になった。
あんな風に会えることは、もうない気がする。

これからこの遊園地を訪れるたび、あの日のことを思い出すのだろうか…。


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