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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



トン、とお互いの体がぶつかる。
しなやかな指は私の頭をゆっくりと撫でた。
抱き寄せられ、包み込むみたいに触れられれば、何だかまるで甘やかされているみたい…。

髪をひと束掬い、指がそこを滑っていく。
徐々に下りてきた指先は次に首筋を掠めて、ゾクッとむず痒いような、妙な感覚に。
ちょっと擽ったいし、さっきから視線は交わらない。
髪に目を落としながら、長い睫毛が瞬きとともに揺れている。

ツッキーの触れ方は厭らしくて、そもそも何でこんなことしているのか意味がわからなくて…

思わず息を潜め、硬直するしかない。




「花びら」


「…え?」


「付いてたよ」



ようやく離れていったツッキーの指。
そこには、ピンク色の桜の花びらが一枚。


「……」


やだ…
それ、取ってくれただけ…?


……拍子抜け。今の私、まさに放心状態。


「意識してるって、どっちが?」


勝ち誇ったような憎たらしい顔で薄ら笑いを浮かべるツッキー。

悔しい!
悔しい…けど…
今確かに、ドキドキした…かも、しれない。

だけど素直に認めるなんて癪だ。


「してないし」

「いや、明らかにしてたでしょ」

「してないの」

「顔赤いけど」

「お酒のせい!」

「ムキになってる時点で説得力ないからね?」

「もう!ツッキーは私に意識させたいワケ?」

「……は?」


執拗に私を苛めていたツッキーは、そこで言葉の勢い止めた。
怖い顔をしたままこっちを見てる。

何か、怒らせること言った…?

いつもの冷めた表情なら見慣れているし、どうということはない。
でも真顔で眉間にシワを寄せて、こんな風に見下ろされると…
迫力があって、正直怯みそうになる。


「な…何か言ったら!?」


怖い癖に煽るとか、何を考えてるんだろう私は…!
でもこの空気が異様なのはわかるから、それを何とか変えたくていつもどおり喧嘩腰に振る舞う。


怖々身構えていると、小さくため息をついたツッキーから声が漏れた。


「…眠い」


「…え?」


「帰ろ」


私の問いには答えず、しかも嫌味のひとつも口にしないまま、公園の階段を昇っていく。
ボーッとしている間にも距離は離れ、私から遠ざかっていくツッキー。
いつもと違う彼に調子を狂わされながらも、慌ててその後ろ姿を追いかけた。




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