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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



ふと頭を過ったのは、ツッキーの部屋にあった手紙。
きっとビンゴだと、勢いよく振り返ったその時。

足元がぐらつき、体勢が崩れる。


「わっ…!」


「ちょ、危な…!」


前のめりになり倒れそうになるけれど、すぐに二つの腕と固い胸板によってそれは阻止された。

支えてくれたのは、ツッキー以外にいるはずもなく…


「…酔ってんだから気を付けなよ」


呆れたような声が耳の間近で響く。


「ごめん…」


階段ひとつ分下の段に立つ彼とは、いつもより目線が近い。
それでも私より背が高いままなんだから、一体何を食べたらこんなに大きく育つのだろうか。

そんなことを考えていれば、ふと鼻先を擽る香りに気づいた。

抱き止められたままの格好で骨張った肩に手を掛け、背伸びをしてその首元に顔を寄せてみる。


「何か…いい匂いする。香水?」


アロマのような、ウッディ系の香り。
清涼感のある清々しいそれは、クールなツッキーによく馴染んでいる。
ゆっくりと鼻から息を吸い込んでみたところで、視界が大きく揺れた。

ツッキーが思いきり私の体を引き剥がしたのだ。

驚いて目を見開くと、そこには困惑したように眉を寄せた顔が見える。


「びっ…くりした…。どうしたの…?」


「ダメでしょ…そういうの…」


「……え?」


そういうの?どういうの?
人様の匂いを嗅ぐのが失礼だってこと?

「…すみません」

「はぁ…意味わかってないよね?」

「何それ?あ、わかった!ツッキー、私のこと意識しちゃったんでしょ?」

以前からかわれた文句を使って、仕返ししてみる。
今度はツッキーが困ればいい。
あの時の私みたいに赤面するとは思わないけど、ほんの少しでもダメージを与えてやれと、イタズラ心に火が着いた。


ところが目の前の顔はますます歪み、さも不機嫌な様子が窺える。
冗談なのに、そんな顔しなくても…。


「顔怖いよ?ちょっとふざけただけじゃん…」


私の言葉に返すことはないままツッキーの腕がこちらに伸びる。
何をされるのかと身構えていれば、後頭部に大きな手が添えられ、そのままグッとツッキーの方へ引き寄せられてしまった。


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