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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



ラストのデザートは三種類から選べるということで、私はガトーショコラ。
ツッキーは苺のショートケーキ。
コーヒーとともに、二人分のそれがテーブルに並んだ。

「美味しいね、これ」

料理を食べている時は、私が感嘆の声を上げても軽く頷く程度だったツッキー。
でもケーキを口にした途端、思わず零れてしまったかのようにそう言った。
いつもすました顔をしてるけど、ケーキを食べてる時だけはそれがほんの少し綻ぶことを、私は知っている。

なんだかそんなツッキーが可愛く見えてしまうくらいには、今気分がいい。






お腹も気持ちも十分に満たされ、私たちはホテルを出て歩き出した。
遊歩道に植えられた桜は今満開だ。
風に乗って、花びらがハラハラと落ちてくる。

「もう桜散り始めてるね。寂しいなぁ」

桜の枝にチラホラ葉が付き出すと、毎年物悲しい気分になってしまう。
どこかで一日雨でも降ったら、一気に花を落としてしまうかもしれない。

「ねぇ、こっちから帰ろ?」

ここから真っ直ぐに歩いて行けば、ツッキーのアパート。その角を曲がった先に、私の家。

でも夜桜を眺めるためにちょっとだけ遠回りしたくなり、そう提案する。
渋々付き合ってくれるツッキーと一緒に、子どもの頃よく遊んだ公園までやってきた。

「ここ、桜綺麗でしょ?」

「そうだね」

「毎年この公園の桜見るの、楽しみにしてるんだ。宮城は名所とかある?」

「あるけど、向こうはこの時期こんなに咲いてないんだよね」

「え?ほんとに?」

「うん。東京来てちょっとびっくりした」

「そうなんだぁ」

舞い落ちてくる花びらの向こう側で、ツッキーは桜を見上げている。

絵になるなぁ…なんて、ぼんやりその姿を眺めていると、綺麗な顔がこちらを向く。


「そろそろ帰らない?」

「え、まさか飽きた?」

「うん」

「なにそれー?情緒がないなぁ」

「情緒とか。一番言われたくないのが汐里。いや、一番じゃないか…」

「やったぁ、一番は逃れた!」

「喜ぶこと?いつもなら突っ掛かってくるのに」

「今は気分いいから、何でも流せる!ちなみに誰が一番?」


公園の階段を昇りながら、そんな他愛ないことを話す。
後ろから付いてくるツッキーは小さく唸った。


「日向…、かな」


「えー?ヒナタさん誰?…あ!元カノ!?」



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