第5章 glass heart【赤葦京治】
"大切な友達" ……。
それって、喜んでいいことなのだろうか?
そう思ってもらえても、私に赤葦さんを好きな気持ちがある分余計に辛い。
赤葦さんの優しさが、どんどん苦しくなる。
これ以上好きになんてなりたくないのに…。
「赤葦さんのバカァ…」
もう頭の中がグチャグチャで、思わずぐったりと項垂れた。
「もうさぁ、告っちゃえばぁ?」
頭上から届いたのは、気だるげな声。
告る…?
告白する、ってこと…?
信じられない気持ちで顔を上げ、テツさんの真意を探る。
ぶつかった視線は、気だるげな声に反して真剣だった。
「赤葦のこと好きになって、どんくらいだっけ?」
「…2年、くらい」
「潮時じゃね?前にも後ろにも進めねぇのって、しんどいだろ」
「でも…ダメ。赤葦さんを困らせるだけだもん…」
「いいじゃん、困らせたって。そこまで遠慮しなきゃダメ?つーかさ、お前それ、思いやりか臆病なのかどっちよ?」
「……」
痛いところを突かれた。
赤葦さんを困らせたくないのは本当のこと。
でも、今の関係が壊れてしまうのが堪らなく怖い。
だってこの前三人で過ごした時間は本当に楽しくて…
告白しちゃったら、もうあんな風には出来なくなってしまうかもしれない。
怖いんだ…。
僅かな繋がりでもいいから、赤葦さんとの糸を断ち切りたくない。
だけど……
このままでいいのかなって、この間からずっと考えてる。
「そのとおりですよ、ホント。怖いんです。臆病なんです、私。どうしたらいいのかわからなくて、どっちに向かって歩いたらいいのかわからなくて、自分をがんじがらめにしてる感じ…」
「今を変えたいなら、新しい恋をするか、がっつりフラれるか。無理矢理にでも自分の中に波風立てるしかねぇよ」
「ん…。そう…かも…」
「お前が気持ち伝えても、あいつは変わんねぇよ。わかるだろ?赤葦はそういう奴だって」
「……はい」
それも想像がつく。
好きだと伝えたら、きっと私の傷が一番浅く済むような綺麗な言葉を返してくれるのだろうと思う。
赤葦さんはきっと変わらない。
変わってしまうのは、私自身。
私は器用な人間ではないから、今までと同じでなんていられなくなる。