第5章 glass heart【赤葦京治】
「ちょっと、写メ撮らせてください…!」
「おう!撮れ撮れ!」
「汐里?まさか黒尾さんに送るつもりじゃないよね?」
「そうですよ」
「ダメ。その写真で色々揺すられそうだから」
スマホを構える汐里の手から、それをヒョイッと取り上げる。
「えー?テツさんそこまで悪どいかなぁ?」
「悪どいよ。人相からしてそうでしょ」
「赤葦さん辛辣!」
「気ぃ抜いてネタ掴まれたお陰で、何度合コンに強制参加させられたか…」
そう。今思えば、汐里と初めて出会った合コンも黒尾さんに揺すられやむ無く参加したんだった。
木兎さんちで飲んだ時、夜食のラーメンを作りつつ梟谷学園の校歌を歌っているところを動画に録られてしまったのだ。
アルコールは怖い。
その辺りの記憶はないのに、ハッキリと証拠映像が残されていたのだから、言い逃れなどできない。
黒尾さんの手口はもはや詐欺師か悪徳業者のようなものだ。
木兎さんとのペアルック写メなんて手に入れた日には、小一時間爆笑した上どんな悪ふざけを思い付くかわかったもんじゃない。
「でもさすがのテツさんだって、今はそんなことしないでしょう?赤葦さん彼女いるんだし」
同情するような目で、こちらを見上げる汐里。
あえて言うことでもないから口にはしなかったが。
話題に上がったとなれば、別に隠すことでもない。
「俺、彼女とは…」
「なあなあ、アレ食わねぇ!?」
遥と別れたことを告げようとしたところ、ある一点をガン見した木兎さんがこちらに向かって手招きする。
「何です?」
「アレ!ホットドック!」
「腹大丈夫ですか?」
「だいじょぶ!むしろ腹減ったし!」
「私、お土産も見たいなぁ」
「じゃあ順番に回りましょうか」
取り合えず腹を空かせてソワソワしている木兎さんにホットドックを与え、一瞬で胃袋に収まったのを確認したあと、ギフトショップに向かった。
人で賑わう中を、雑貨、文具、菓子類など色々物色する。
汐里は缶を両手にひとつずつ取り、何やら悩んでいる様子だ。