第5章 glass heart【赤葦京治】
「わぁ…メロンのジェラートって美味しいんだ!知らなかった…。冒険してみるもんですね!」
「好きなだけ食っていいよ」
「え?そしたら全部なくなっちゃう」
「そんな気に入った?じゃああげる。俺バニラ食べるから」
「赤葦さん、器が大き過ぎる!」
「いや、アイスくらいで器も何もないよ」
大袈裟な台詞と、幸せそうにジェラートを口に運ぶ汐里の笑顔にまた癒され、二人でそれを食べ終えた。
ゴミをダストボックスへ捨てに行き戻ってくると、ちょうど汐里のスマホが鳴る。
「あ、光太郎さんだ。もしもし?はい、とっくに出ましたよ。お腹大丈夫ですか?ああ、良かった…で、今どこに?そうですか、わかりました。あ!そこにいてくださいね!また迷子になりますから!」
"また迷子"という聞き捨てならない言葉で念を押し、汐里はスマホをバッグへと仕舞った。
「光太郎さん、お化け屋敷まで戻ろうとしたら迷ったんですって。で、ウロウロしてたら女の子に逆ナンされたとか」
「逆ナン…そのパターンもあるのか…」
「…?そのパターンって?」
「いや、こっちの話。どこにいるって?」
「観覧車の前らしいです」
「そう。じゃあ行こうか」
観覧車を目指して、広いパーク内を二人で歩いて行く。
そう言えば、夜には広場でショーがあると言っていた。
昔来た時に見たことがあるはずなのだが、それは記憶の彼方。
これから夜を迎える園内の雰囲気がどんなものなのかと想像すると、それもまた興味深い。
つまり、何だかんだ楽しんでる自分がいる。
そんな自分自身を意外に思いながら、目的の場所まで到着した。
少しキョロキョロ視線を漂わせただけで、特徴的なムササビヘッドは見つかった。
向こうもこちらに気づいたようで、両手をブンブン振っている。
「あか~し~っ!汐里~っ!ここ~っ!!」
はいはい。見えてますよ。
心で返事をしつつ、やっと木兎さんと合流することができた。
「木兎さん、まさか逆ナンしてきた人たちと遊んでました?」
「んなワケねーだろ!振り切るの大変だったんだからな!」
「好みじゃなかったとか?」
「いんや!めちゃ可愛いかった!でも今日は汐里と赤葦とで楽しむつもりで来てんだから。いくら可愛くたって、他の女の子と遊ぶなんて考えにはなんねーの!」