第5章 glass heart【赤葦京治】
三人組の横を足早に通り過ぎ、汐里の元へ向かう。
「お待たせ」
「あ、ありがとうございます。光太郎さん電話繋がらないんで、LINE入れときました」
「そう」
こちらを見上げる汐里の様子からして、幸いさっきの男たちの会話は届いていないらしい。
バニラのジェラートを手渡すと、嬉しそうな笑顔を浮かべながらお礼を言われる。
「向こう、座ろうか」
「え?ここじゃダメですか?」
「あっちの方が雰囲気良さそうだから」
汐里の手を取り、汚い雑音が届かない場所へ。
背後から小さな舌打ちとボヤキのような声が届くが、ひたすら無視だ。
「赤葦さん!?…何か急いでます?」
「んー。コレ、溶けちゃうでしょ」
「あ…はい…でもっ、」
うん。手、だよね?
戸惑う汐里に構わず、繋いだ手に心持ち力を入れた。
あいつらの目には、汐里があっさりヤれるような軽い女に見えたのか?
チラリと視線を下げれば、恥ずかしそうに頬を赤くする汐里がいた。
冗談じゃない。
手を繋ぐだけでこんな反応する子だぞ?
奴らの脳内で汐里が汚されるかもしれないと思うと、すぐにあの場所から連れ去りたくなった。
今まで汐里という子を見てきて、彼女がいい子だってことは痛いほど理解してる。
大切だ。
友達として。
だから、こんな言い方は大袈裟かもしれないけど…
守ってやりたくなったんだ。
「ここ。さっき通った時、雰囲気いいなと思ったんだよね」
「ほんとですね。綺麗な花壇!」
大きな噴水が目の前で飛沫を上げている。
それを囲むように彩られているのは、円形の花壇。
花の種類なんてものはよく分からないけど、この季節らしく色彩に溢れている。
ベンチに腰掛け、お互いスプーンで掬ったそれを口に入れた。
「美味しい。幸せ~!」
「こっちも食べてみる?」
「いいんですか?じゃ、私のもどうぞ。何味ですか、これ?」
「メロンだよ」
ジェラートを交換し、汐里のバニラを掬って食べる。
「うん。想像どおりの味」
「もう、またそういう意地悪…っ、何コレ!?すっごく美味しい!」
汐里は俺のメロンを食べて感嘆の声を上げた。