第5章 glass heart【赤葦京治】
「もう怖いぃ…赤葦さーん…助けてぇぇ…」
腰が引けてる汐里を強引に引っ張りつつ、進路に示される先を行く。
「うーん…助けるって言っても、ここ出るしかないもんなぁ」
「お化け屋敷なんて入るんじゃなかった…」
「頑張れ。外出たらアイス買ってあげる」
「そんなぁ、子どもじゃありませんよぉ!」
「あれ、ダメだった?じゃあ目ぇ瞑ってなよ。危なくないように、俺が出口まで連れてってあげるから」
「え?どういうこと…」
繋いでいた手を離した俺は、戸惑う汐里の頭を抱き寄せ腕で耳元を覆った。
ついでに手の平で目も塞いどくか…。
「ちょ、赤っ…!」
幸い今日の汐里はヒールではないし、このまま俺が連れて歩いても危険ではないだろう。
最初は俺の腕の中でモガモガ抵抗していた汐里だったが、「次の部屋来たよ」と教えてやれば、すぐ様身を固くして大人しくなった。
音楽室、美術室、古びたトイレ。学校の怪談のネタにありそうなセットの中を進んでいく。
その度不気味な幽霊が登場するが、目も耳も俺が塞いでいるからか、汐里は肩を震わせる程度の反応に留まっている。
「もう出口みたいだよ」
小脇に抱えていた頭を離すと、俺の指し示す先に目をやる汐里。
「ほんとだ…!」
屋外からの光を捉え、強張っていた顔はようやく緊張が解けたように綻んだ。
こんなに怖がっているのも可哀想だし、何とか出口まで来られてよかった。
内心俺もホッとする。
しかし、外へ出ようとする間際…
「きゃああぁぁ…っ!!」
「!?」
出口付近に置かれていた人形の首が、大きな音と共にドーンと飛び出してきた。
ああ、これだ…。
俺がイメージしていたお化け屋敷。
でも不意打ちはやっぱり驚くし、何より心臓に悪い。
「やだもう!何で最後にこんなびっくりさせるの!?」
「うん、びっくりしたね…」
「ほんとにびっくりしてます!?」
「してるよ」
ようやく日の光の下へと抜け出した俺たち。
隣を見れば、最後の生首が尾を引いているようで汐里は精魂尽き果てている。