第5章 glass heart【赤葦京治】
*赤葦side*
「よおーっし!お前ら、まずはコレ着けろ!」
「…来た」
「…ですね」
目的地に到着早々木兎さんに差し出されたのは、予想通りの品…ネズミの耳を型どったカチューシャだ。
両手に持ったそれを、俺たちに手渡してくる。
「何だよ赤葦その顔~!こっちじゃ嫌なのか?汐里のやつのが良かった?」
「んなわけないでしょ…。どんな罰ゲームっスか…」
自分の顔の表情筋が歪むのを自覚する。
それもそのはず。汐里が受け取ったのは、赤いリボンが着いたカチューシャなのだ。
「まあ…メスのよりはこっちのがマシですかね」
「ちょっ、赤葦さん!メスって!」
まるで、木兎さんにそうするように突っ込んでくる汐里。
彼女の小さな頭に装着されたそれを確認し、改めて尋ねる。
「え。メス…だよね?リボン着いてるし…」
「そうですけど、女の子って言ってあげてくださいよ!」
…ああ、そういうこと。
ネズミのキャラだからって、メスって言い草は良くないのか…ひとつ勉強になった。
それにしても、リボンのネズ耳…妙に似合ってる。
元々汐里は目を惹く愛らしい顔立ちをしているから、ネズ耳によってそれが助長された感じだ。
「可愛いね、それ」
「え?」
「似合ってる」
ふと呟けば、俺の声を拾った汐里はみるみる顔を赤くした。
あ…アレみたいだな…。リトマス試験紙。
たぶんだけど。
汐里はこんな文句くらい、男から言われ慣れてると思う。
それなのにこんな反応されてしまうと、俺まで照れるというか…。
「さて。木兎さん、どこ行きます?」
気を取り直し、潔くネズミの耳を着けて木兎さんにお伺いを立てる。
「んじゃあ、手始めに絶叫ジェットコースターだな!」
「ジェットコースター?じゃあ、コレ取った方がいいんじゃないですか?吹っ飛びますよね?」
「お!?…お、おう…そっか!」
さっさとネズ耳を外す俺に習い、木兎さんもそれを頭から抜き取る。
まさか着けたばかりのネズ耳を早々に外すことになるとは思っていなかったようだ。