第5章 glass heart【赤葦京治】
「イケメンねぇ…!モデルさんみたい!」
「そうだね」
「彼女いるの?」
「さぁ?」
「月島くんもほんとに友達?」
「そうだよ」
「なーんだ」
…何だとは何だ。
娘が彼氏の一人も連れて来たことないから、心配してるのかな?
いや、私だって彼氏がいたことくらいはある。
でも実家に連れてくるのって、ちょっと躊躇ってしまうのだ。家族に紹介なんて、重いって思われたら嫌だし。
変に緊張させるのも悪いし…。
男友達とは遠慮なく付き合えるけど、彼氏となると色々気を遣ってしまう。嫌われたくないし。
本当に、恋愛下手だと思う。
「頼りになる彼氏がいたら、お母さんも安心なんだけどねぇ」
大きなひとり言を呟きながら、家へ入っていく母。
親の気持ちとか分からないけど、そういうものなのかな?
でもそうは言ったって、無理に作るものでもないし、作ろうと思ってできるものでもない。
私自身、この現状を嘆くつもりもない。
取りあえずはそう自己完結して、私も家の中へと続いた。
その週の休日。
特に予定もなく自分の部屋でDVDを見て過ごしていると、ドアの外からお母さんに呼ばれる。
「汐里、叔父さんから苺が沢山届いたんだけど。食べる?」
「食べる食べる!」
リモコンの停止ボタンを押し、テレビも消す。
すぐに部屋を出てダイニングへ。
お母さんの弟…つまり叔父さんは、苺のハウス栽培をしている。
毎年沢山の苺を送ってくれるこの時期を、私は何気に楽しみにしているのだ。
ダイニングテーブルの上にはガラスボウルにこんもりと盛られた艶々の赤い苺。
二人でそれを摘まみながら話をしていれば、お母さんの口からある人物の名前が飛び出した。
「そうだ、月島くんにお裾分け持って行きなさいよ」
「え…?ツッキー?」
「だって近所でしょ?毎年食べきれずに傷んじゃうんだもの。勿体無いじゃない」
「うーん、そうだね…」
苺のショートケーキ好きなツッキーだから、きっと苺も好きだと思う。
この前買い物の荷物持ってくれたし…。
「ちょっと電話してみる」
ツッキーもお休みかな?
スマホを手にしてツッキーの電話番号までスクロールしていく。
発信ボタンをタップし、繰り返されるコール音を聞いていると…
『もしもし?』
耳元でツッキーの声が聞こえてきた。