• テキストサイズ

フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



体が冷えていく。

予想していたとおりの言葉なのに、脳はそれをすぐに受け入れようとはしてくれない。
覚悟していたつもりでも、心のどこかで俺の見当違いであってくれ、と願っていたのだ。


十分な間を置いて、このあとの遥の言葉を受け入れる準備をもう一度整える。



「理由を聞いていい?」



自分でも、声が強張るのがわかる。
遥は俺以上に平静を装うことが出来ないようで、吐き出す声を上擦らせた。



「好きな人が…できたの…」



「……」



本当に…
どこまでも覚悟していたとおりの展開で…
嫌になる…。





「俺、遥を不安にさせてた?」


会えない時間は沢山あった。
木兎さんたちや、学生時代の友人関係もそう。
俺の時間の全てを遥のために使うのは困難で…。
でももし遥が望むような付き合いをしていれば、遥に寂しい思いをさせずに済んだのかもしれない。

頭を駆け巡るのは、今更考えてもどうしようもない感情ばかり。



「京治は…私のこと、"好き" って気持ちだけで一緒にいてくれてた?」


「……?」


「京治が大切にしてくれてたのは分かってたよ。でも… "私の体に傷をつけた" っていう罪悪感も、私と一緒にいる理由のひとつじゃなかった…?」


「それは違う!」


「だけど…っ!京治…気づいてた?」


「…何?」


「京治は、私に謝ってばっかりいたよ?」


「……」


「京治に謝られる度に、何に対して謝ってるのかわからなくなってきた。私は、"ごめん" より "好き" が欲しかったの。京治に想われてるって自信が欲しかった。この傷の責任とか、そんなこと少しだって考えて欲しくなかった。好きって気持ちだけで私を見て欲しかったよ…!」


息を吐ききる勢いで、辛そうに遥は訴えた。





何だよ…

そんなの…

遥がそんな気持ちでいたなんて…

想像もしていなかった…。




「……俺は…、好きだよ…遥が…」



「…ごめん」



「……」



「ただ私を好きでいてくれる人がいたから…

何も考えずに寄りかかれる場所があったから…

私は…そこが心地がよくなっちゃったの…

本当に、ごめんなさい……」




/ 680ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp