• テキストサイズ

フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



それから三日。
秋本さんは、学校を休んだ。
担任から聞くところによると、傷の具合が深刻というよりは精神的なものが原因だそうだ。
きちんと謝ってもいないし、秋本さんのことが気がかりで勉強にも部活にも集中できない。


その日の放課後。
居てもたってもいられず、俺は秋本さんと親しくしているクラスメイトに声を掛けた。









学校からさほど遠くない場所にある図書館。
その敷地内にある木陰にベンチを見つけ、腰を下ろす。

あのあと、クラスの女子の一人が秋本さんに連絡をとってくれた。
秋本さんの家がこの図書館の近くだということで、俺は今、彼女を待っている。

会ってくれると聞いて少しだけホッとした。
謝ることも叶わないままでは、申し訳無さすぎる。
でももし今回のことが原因で、秋本さんがこのまま学校に来られないなんてことになったら…。
その可能性も否定できなくて、胸がザワザワと落ち着かない。

ため息ばかりを繰り返し足元に視線を落としていると、ふと目の前に影ができた。


『ごめんね、待たせちゃった?』


そこには控えめに笑う秋本さんが立っていた。
Tシャツから伸びる左腕には、包帯が巻かれている。
秋本さんのその姿が痛々しくて…
反射的に立ち上がり、頭を下げた。


『秋本さん、本当にごめんなさい。俺のせいでこんなことになって…』


蝉の鳴く声だけが二人の間を流れていく。
それはほんの数秒だったと思うけど、俺にはとても長い時間に思えた。


ふいに、腕に何かが触れる。
添えられているのは、彼女の細い指。
視線を合わせてみれば、秋本さんは小さく首を振った。

『謝らないで。赤葦くんは悪くないじゃない』

『でも…、俺が、』

『ほんとにそんな風に思わないで。悪いのは…佐野くんたち』

俺を殴った男の名前が挙がる。
確かに、あんな騒動を起こしたあいつらも悪い。

でも、俺にだってそれなりに鍛えている自負はあった。
朝も放課後も土日も、長期の休みだって、ずっとバレー漬けの日々。
それなのに、たった一発殴られただけで吹っ飛ぶなんて…。
運動部が聞いて呆れる。


/ 680ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp