• テキストサイズ

フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



汐里を受け止めようとした時、突出した木片が腕に鋭い感触を与えた覚えはある。

改めて見てみると広範囲に皮膚がめくれ、何というか…見た目がグロい…。

心配そうに傷口を見ている汐里。

「大丈夫。そんな痛くないよ」

「ごめんなさいっ、私が体勢崩したから…」

「いや、あれは俺も予想できなかったし。それより、早くお父さんのところへ帰してあげよう」

「……はい」

取り合えず、お父さんや黒尾さんたちに良太くんを保護したことを伝える。
俺が連絡を取り合っている間に、汐里に宥められた良太くんは落ち着きを取り戻していた。
それじゃあ帰ろうかと、良太くんの手を汐里が握る。


「ぼく、おなかすいた…」


「そうだよね…。あ、私クッキー持ってるよ」


汐里は斜め掛けにした小さなバッグから個装したクッキーを二枚取り出し、封を開けて良太くんに渡す。

「手汚れてるから。このまま食べて?」

「うん」

本当に、大事に至らなくて良かった。
小さな口でそれを食べる良太くんを眺めたあと、何気なく汐里にも視線を移す。


その頬には、大きな瞳から溢れた涙が次々と伝っていた。


「一人で怖かったよね…、おなかすいたよねっ、…ごめんね…」


そう言って、泣きながら良太くんの体を抱きしめた。
当の良太くんは、不思議そうな顔をして汐里を見つめている。


ああ…きっと、
早く見つけてあげなきゃ、って
ずっと気を張ってたんだろうな…。



汐里の震える肩に、そっと手を置いた。


「汐里のせいじゃないよ」


「でもっ、あの時私がちゃんと引き留めてれば…」


「俺はそんな風に思ってない。良太くんが無事で、ほんとに良かった…」


「…はい」


小さく頷き俺を見る汐里の顔は、初めて見る弱々しいものだった。
汐里が泣いているところなんて、今までに見たことはない。

いつも明るくて元気で、笑顔が印象的な汐里。
その汐里がこんな風に泣いている姿は…
俺の心を、無性に痛くする。

無意識に、薄茶色の髪に手が伸びた。
彼女を宥めるように、一回二回と撫でる。

けれども、一度溢れてしまった涙はなかなか止められないらしい。


/ 680ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp