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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



別に、これ以上ツッキーに聞きたいこともないし。
黙って家への道を進む。

私が目指す方向へ歩いて行くツッキー。
特に会話もなく一定の間隔を空けて歩いていた私たちだけれど、ふいにツッキーが立ち止まりこちらを振り返った。


「じゃ、僕んちここだから」


そう言って指さしたのは、先月建ったばかりの新築のアパート。
毎日通ってる道だからここにアパートが建ったことは知っていたけど…

「こんなに近所だったんだ…」

「え?」

「私の家、すぐそこなの」

ほんとに目と鼻の先。
たぶん、5分もかからない。
こんなご近所にツッキーが引っ越して来てたなんて、びっくり!


「へえ…」


「……」


ん?
ツッキーは "驚く" という感情がない人なの?
お母さんのお腹の中に置いてきちゃった?

「じゃあ」

「あ、うん、バイバーイ…」

呆気に取られながら何とか右手を振った頃には、ツッキーはもうアパートの階段を昇っていくところだった。












みんなで会う前日。
キッチンでトリュフ作りに取りかかる。
板チョコを割ってボウルに入れて、湯せんして溶かす。

「簡単、簡単!」

鼻唄なんて歌いながらチョコレートを溶かすものの、ボウルの中のチョコは、徐々に水の上に泥が浮いてるみたいな妙な状況に…。

「何、これ…」

悲惨な形状になった物体に目を落としつつ、まさか…と嫌な予感がしてスマホで検索してみる。

「 "お湯の温度が高すぎると、チョコレートの油分が分離してしまいます" …。何それ!」

ガックリと肩を落とす。
何せ、湯せん用にボウルに張ったお湯は熱湯だったのだ。

舐めてた…。
ちゃんと調べてから作れば良かった…。
……もったいないから、これはお父さんと海斗にあげよう。

残りの板チョコを割って、次こそは!とネットで調べながら湯せんしていけば今度はいい感じ。
生クリームを足し、冷蔵庫で冷やしてから丸く固めて…

「わ…すごい!ちゃんとトリュフ!!」

手順どおりに進めた結果出来上がったのは、私が作ったにしては上等のトリュフ。
ココアとココナッツパウダーをまぶした二種類。
四人分のそれをお皿に乗せて、ラップして冷蔵庫へ。
"食べるな!" の張り紙も忘れずに。
こっちを海斗に食べられたら困る。
人様には見栄を張りたいの。
お父さん、海斗。ごめんよ…。


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