第5章 glass heart【赤葦京治】
それから約1ヶ月経ったある日。
来週またみんなで飲もう、とテツさんから電話があった。
何でも、光太郎さんはプロのバレーボール選手だけあってなかなか忙しい人らしく、しばらく会えなくなるんだとか。
寂しいけど、頑張ってる光太郎さんを応援したい。
みんなで試合観戦とか行きたいな。
ルールとかわかんないけど、赤葦さんならきっと丁寧に教えてくれるだろうし…
……。
まただ…。
ふいに浮かんでくる赤葦さんに、正直困惑してる。
楽しい時、怒った時、面白いことがあった時。
こんな時赤葦さんならどんな反応する?って、無意識に想像する。
またあの優しい顔するのかな?
怒ったら怖いのかな?
声を出して笑ったりもするの?
そんなことを考えながら、一人含み笑いしている自分に気づく。
「何か私、キモチワルくない…?」
想像の中で、色んな赤葦さんを勝手に思い浮かべたりなんかして。
仕事帰りに寄ったスーパーのお肉コーナー。
漂ってくる冷気でふと我に返った。
変な妄想はやめやめ!
しょうが焼き用の豚肉をカゴに入れて、あとは牛乳とパン。
「あ…」
店内を進んでいく先。レジの横にバレンタイン用に設置されたチョコレートのコーナーを見つけた。
カラフルにラッピングされた、大小様々なチョコレート。
「そっか、バレンタインだ」
来週みんなで会う日は、バレンタイン直前。
チョコレート…用意しよっかな。お世話になってるし。
せっかくなら手づくりする…?
トリュフなら溶かして固めるだけだよね。
形悪いのは家族にあげることにすればいい。
そう思い立って、お菓子のコーナーへ。
海斗とお父さん入れて、6人分。
板チョコをどっさりカゴに入れる。
これだけ買えば失敗しても作り直せるでしょ。
お会計を済ませたあと袋詰めしてると、隣に誰かが並んだ。
視界の端に映っただけで、すぐに気づく。
すごく背が高い人…。
チラッと横目で見てみる。
「…え?」
「…あ」
「ツッキー!?」
いつもみたいにクールな顔で見下ろしてくるのは、紛れもなくツッキー。
何でここに!?
思わずツッキーがお会計を済ませたカゴに目を向ける。
入ってるのはお酒とお惣菜。
きっと晩ご飯だよね?ってことは、ツッキーんち、この近く!?