第5章 glass heart【赤葦京治】
コンビニには他にお客さんはいなかった。
私はまっすぐアイスのコーナーへ進み、赤葦さんは足りなくなったおつまみを選んでる。
光太郎さんはチョコ系で、テツさんは抹茶。
私は何にしようか…。
「決めた?」
沢山のアイスを眺めている後ろから、赤葦さんが近づいてくる気配がした。
「うーん…悩み中です。ハーゲン○ッツのストロベリーかバニラ」
「両方食べれば?小さいし」
「いえいえ、私太りやすいんです!二つも無理!」
「太りやすい人が夜遅くにアイス食べるのはいいの?」
「……」
「……」
「…それ、言います?」
「そりゃあ、ね」
意外と手厳しいことを言われた…!
そうだよね、確かに。夜遅くにアイス…言ってることとやろうとしていることに、何の説得力もない…。
「あは…。お正月だし、特別!」
「そうなんだ」
笑って誤魔化してみれば、赤葦さんはほんの少しだけ表情を柔らげてアイスクリームを手に取った。
「じゃあ、やっぱり二つ買いなよ。俺と半分ずつ食べればいいんじゃない?」
「半分ずつ?」
「うん」
「いいんですか?」
「いいよ」
思いがけず、私は大好きなアイスクリームを二種類食べられることになった。
なんか、赤葦さんて…。
お会計してもらい、いざ光太郎さんのマンションへ帰ろうとコンビニを出る。
外ではいつの間にか雨が降り出していた。
「今夜雨の予報でしたっけ?」
「どうだろう?俺、傘買ってくる」
そう言って、赤葦さんはコンビニの中へ戻っていく。
結構雨足が強くなってきてる。
天気予報、ちゃんと見とけばよかったな…。
それに少し外に出るだけだからって思って、マフラーも手袋もして来なかったんだよね。
なんか寒いかも…。
「お待たせ」
「いえ、ありがとうございます」
「傘、1本しかなかったんだ」
「え?」
「まぁ、少し狭いけどしょうがないよね」
赤葦さんは買ってきたビニール傘を開き、私のそばに来てそれを差し出してくれる。
「行こうか」
「…はい」