第5章 glass heart【赤葦京治】
「なぁ、汐里。今度は5日後、またここで新年会な!」
光太郎さんがコーヒーを啜りながら私に向かって言う。
既にケーキのお皿は空っぽ。
「え?はい。いいんですか?お邪魔して」
「あったり前だろ~!」
「あ。僕、宮城に帰ってるんでパスです」
コーヒー片手に戻ってきたツッキーが、再び私の隣に腰を下ろした。
「ツッキー、地元宮城なの?」
「うん」
「そっか、お正月だから帰省するんだね」
「あ!そんじゃあさ、みんなで宮城行って新年会するか!」
「そんな大掛かりな新年会止めて下さい。僕に構わず皆さんでどうぞ」
光太郎さんの提案をツッキーはあっさり却下した。
当たり前のように光太郎さんが誘ってくれるのが嬉しかった。
出会ったばかりだけど、このメンバーといるのは楽しいし心地がいい。
光太郎さんは裏表なくて明るい、すっごくいい人。
一緒にいると元気が出る。
学生時代からの付き合いで、お兄ちゃん的存在のテツさん。
ズケズケ立ち入ってくる人ではないけれど、助けて欲しい時には絶対親身になってくれる。
ツッキーにはこの間から隙あらば嫌味言われるけど…。
こっちが心を開けば、きっと仲良くなれるはず!
大丈夫…だよね?…たぶん。
そして、落ち着いていて気配り上手な赤葦さん。
大人な雰囲気の中に潜む、色んな顔。
知りたくなる。もう少しこの人の中に踏み込んでみたくなる。
でも迂闊に近づいてしまうと、誤魔化しきれないほど狼狽える自分もいて…何かが揺らぐ。
まだ出会ったばかり。
赤葦さんのこと、なんにも知らないじゃない。
違う、違うよ。
その感情は違うから―――。
そんな風に自分に言い聞かせる。
でも、言い聞かせるほどに赤葦さんを意識していることにも気づいていて…。
こんな不安定な気持ち、初めて。
恋じゃない。
恋じゃない。
だって恋の始まりってすっごくワクワクするものでしょう?
だからこれは、恋なんかじゃないの。