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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



真横のお皿に乗せられた、赤と白のケーキ。

「好きなの?苺のショートケーキ」

「…悪い?」

眼鏡の奥の瞳をチラッと向けてツッキーが呟く。

「全然。ここのお店のケーキお薦めなの。食べてみて」

苺のケーキが好きだってなんにも悪くなんてない。
変なこと聞くなぁ、ツッキーって。

「…イタダキマス」

「うん」

ケーキの端っこを掬って、口に入れるツッキー。
コクッと小さく喉元が動く。

「ん…美味しい、ね」

「ほんと?良かった!スポンジふわふわだよね。他のケーキも美味しいんだよ。私の少し食べる?」

「いや、大丈夫…」

「そう?味見したかったら言ってね?」

自分の元にやってきたミルフィーユを、フォークで掬って口の中へ。
甘さ控えめのクリームと酸味のあるフルーツが混じって美味しい。


「チョット…コーヒーお代わり」


「うん?」


え?もう飲んだの?

立ち上がるツッキーを目で追う。
向かいの席からは、小さく吹き出す声が聞こえてきた。

赤葦さんが口元を押さえて私を見ている。

……?

「どうしたんですか?何か面白いことありました?」

「…いや、いい子だなって思っただけ」

「え、誰?」

「汐里のこと」

私が…?

「さっきまで月島と言い合ってたのに、全然後引いたりしないんだね」

「ああ、そんなことですか?だって今は何も怒れることないし。ケーキの好みも合って嬉しいし」

「そっか。あんな顔の月島、ちょっと珍しいよ」

「どんな顔してました?」

「戸惑った顔。月島には内緒ね」

そう言って僅かにツッキーへ視線を送った後、赤葦さんは自分の唇の前に人差し指を立てた。

「…はい」


あ…また、だ。

今日は、ちょっとイタズラっぽい顔。

あまり表情の変わらない彼が、新しい顔を見せてくれるたび。
この胸が動揺で大きく鳴るのを自覚せずにはいられない。


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