第5章 glass heart【赤葦京治】
白菜を多目に入れて、ツッキーの目の前に置く。
「どうぞ」
「どうも」
私も自分の分を貰おうと鍋に菜箸を入れる。
「ねぇ、チョット…」
ふと見てみれば、ツッキーが白菜を箸で摘み上げてる。
「これ切ったの、キミでしょ」
渋い顔で見てるのは、切断しきれずに三つに連なった白菜。
「あ、ごめん。ちゃんと切れてなかったんだね」
「適当…」
「あのねぇ。そんなのお腹に入ったら、」
「お腹に入れば一緒って思考が、もうガサツ」
「……」
ムカチーン!
どうしてこう突っ掛かってくるの!?
「あ、こっちもだ」
目の前の赤葦さんも、ツッキーと同じように白菜を摘み上げる。
「やだっ、ごめんなさい!」
「ナニ!?その変わり身!」
ツッキーの突っ込みはスルーだ。
赤葦さんは白菜をパクリと口に入れる。
「いいよ別に。腹に入れば一緒だし」
「わ、赤葦さん優しい!」
「何か腹立つ…」
「赤葦さんて大人だなぁ!」
「わかったから!食べればいいんでしょ?」
ツッキーとは文句言いながら、言われながら。
みんなでワイワイ鍋を囲んでお喋りして、まるで二度目に会ったとは思えない程打ち解けて、楽しい時間を過ごすことができた。
「私ケーキ買ってきたんですよ。食べます?」
「おっ!食う食う!甘いものは別腹~!」
ノリノリの光太郎さんと一緒に人数分のコーヒーとお皿を準備して、ケーキの箱を開く。
「どれでも好きなのどうぞ?」
五種類違うケーキを買ってきた。
自分の好みで選んだから、正直私はどれでもいい。
「苺ショートはツッキーにやるよ!」
「あー、だな」
「お構いなく」
テツさんがショートケーキをツッキーのお皿に置く。
「俺はねー、モンブランかなぁ」
「あっ!俺も狙ってたヤツ!黒尾、ジャンケン!三回勝負な!」
「え、いや。そこまでしなくても。お前に譲る」
「おいっ!何か俺が駄々っ子みたいになってる!」
ケーキひとつ選ぶのにも、ほんとに賑やかだ。