第5章 glass heart【赤葦京治】
次の日は、朝からソワソワと落ち着かなくて。
ゆっくりごはん食べた後は、部屋の片付け。
サボりたかった大掃除にも結局手をつける。
お風呂の床を泡まみれにして、よくわからない感情と共にブラシで擦る。
おかしい…
何かしていないと落ち着かない。
家族みんなでお昼ごはんを食べて、その後は買い物へ。
何度も時計を見ては、ゆっくりと進んでいく針にもどかしさを覚えてしまう。
「汐里、時間大丈夫なの?出掛けるんでしょ?」
「うん。帰ったら準備する」
「そう?時計ばっかり気にしてるから」
さすがお母さん。
よく見てらっしゃる…。
「カニ鍋するんだよ!楽しみだから、つい」
「男かぁ?」
荷物持ちの海斗が茶々を入れてくる。
「男の人もいるけど、忘年会。みんなで食べるの!」
「ふーん。料理でアピールするチャンスじゃーん?」
「あんたバカにしてんでしょ?」
「あ、わかった?でも鍋なら失敗しようがないし。姉ちゃんのワイルドな腕でも…いてェ!!」
「ちょっと黙ったら!?」
海斗の脇腹に拳をグリグリ押し付ける。
ほんっと、憎まれ口だけは一人前なんだから。
「外でじゃれるの止めてよ?子どもじゃないんだから、恥ずかしい」
すかさず、呆れたようなお母さんの声が届く。
「わかってまーす。私そろそろ準備したいから、先に帰るね!」
「あ、ズリィ!」
手荷物を全部海斗に持たせ、スタスタと歩幅を早めて先に家まで向かった。
ちょっと早いけど他にすることもないし。
少し念入りにメイクして、真新しいニットワンピに袖を通す。
タイツで防寒もバッチリと。
料理もするし、髪は纏めていこう。
長い髪をクルクル巻いて、頭の上でおだんごに。
自分の中でのルーティンどおりに支度をして、最後にドロップ型の小さなピアスを装着。
鏡の中の私を眺める。
変じゃないかな…大丈夫…?
あ、そうだ。エプロンとか持ってく?
普段使ってる花柄のエプロン。
料理はまず形からってことで、一目惚れして買った可愛いデザインのもの。
けど、やっぱり張り切り感出ちゃうよね…。
料理得意なわけでもないのに。
迷ったけど取り合えずエプロンはやめることにして。
必要な物だけを詰め込みバッグを手に取って、私は家を出た。