第5章 glass heart【赤葦京治】
「オネーサン、大丈夫~?」
重い瞼を持ち上げてみると、金髪で耳と鼻にまでピアスをした、いかにもガラの悪そうな男の人が…。
「うわっ、すっげー可愛いじゃん!気分悪ぃの?顔青いよ?」
「…大丈夫です」
絡まれたら嫌だ。部屋に戻ろう。
立ち上がろうとするけれど、急に動いたからか足元がふらつく。
「あー、無理すんなって。可愛い子がこんなとこ一人でいちゃ危ないよー?室内とはいえ、夜も遅いしさぁ?」
何か怖い…。
どうしよう…スマホはバッグの中だし…。
「部屋番わかる?ツレの人、呼んできてやろうか?」
「……え?」
「え?ヒトカラ?」
「……違います」
「じゃあ呼んできてやるから、待ってな。部屋どこ?」
あれ…、何か普通にいい人?
やだ…
私、人には見かけで判断して欲しくないって思ってるクセに。
この人のこと、怖い人って決めつけてた…。
戸惑いつつ、少し休めば大丈夫だと告げようとしたその時。
「汐里」
別の男の人の声がする。
振り返ったところには、私たちを見比べてる赤葦さんが立っていた。
「知りあい?」
「いえ…」
「あ、おツレさん?この子気分悪いみたいだからさ、付いててやんな。じゃ、お大事にね!」
男の人は手を振りながら、アッサリとロビーから離れていく。
「あの、ありがとうございました!」
その背中に向かってお礼を言う。
私の声が届いたかはわからないけれど。
「…ナンパでもされてるのかと思った」
そばに立つ赤葦さんが、ひとり言のように呟く。
「実は私も、怖い人かと。でも、顔色悪いから誰か呼びに行こうか?って」
「そっか。…ごめん、呼び捨て」
「…え?いえっ、全然!声かけてくれて、ありがとうございました!」
そうだ…。
さっき初めて名前呼ばれた。
しかも、呼び捨てだった。
でも…全然嫌じゃない。
「気持ち悪い?」
「いえ。さっき吐い…、あの…今は、大丈夫です」
私の言いたいことがわかったみたいで、少しだけ笑う赤葦さん。
自販でミネラルウォーターを買って、私に差し出してくれる。
「水分摂った方がいいよ。友達誰か呼んでくる?」
「ありがとうございます。でもみんな楽しんでるし、水差しちゃ悪いんで」
ここへの移動中、今日の合コンは当たりだって、みきたち喜んでたもんね…。