第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「ちょっと待てよ…。良くねぇよな?納得してる顔じゃねぇよ、それ」
「……」
「言いたいこと、あるだろ?悪いのは俺だ。どんな酷い言葉使ったっていい。自分が我慢すればそれでいい、とか思わないでくれよ」
梨央のことだから、きっとそう。
自分を押し込めて、ギリギリまで我慢する。
今までに、何度もそんな姿を見てきた。
「そんなんじゃない…!私からは何も言えることがないの!」
膝の上に置いた拳に視線を落としたまま、梨央は語尾を強めた。
頑ななその態度に、俺の声もつい大きくなってしまう。
「何だよ、それ。自分が諦めればいいって、言いたいこと飲み込むなよ。俺たち、付き合ってんだよな?俺そうやって我慢されるの、すげぇ嫌いなんだよ!」
しまった……
"嫌い" って、違う……
そうじゃねぇんだよ……。
俺はただ、梨央に吐き出して欲しかっただけ。
梨央が納得のいくまで、話し合いたかっただけ。
早く、誤解を解かねぇと……。
俺を見る梨央の瞳が、悲しそうに揺れている。
「ごめん…!違う…俺…、」
「そうじゃないの…!」
「え…?」
「私、何も言えない…。言える立場じゃない」
「…?どういうこと?」
「私……優くんとキスした……」
「……」
「だからてっちゃんを責めるなんて、とても出来ない…!」
は……?
キス……?
梨央が…大将と…?
梨央の言葉の衝撃で、息が詰まる。
「キス…?いつ?何で?」
「私の…誕生日…。ごめんなさい…辛くて…雰囲気に流されたの…」
梨央の声が震えてる。
でも、そこを気にかけてやれる余裕なんかない。
辛い思いをさせたのは確かに俺だけど…
何で、キスなんか……