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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】



優くんから、熱情はもう感じられない。
目が合った途端、整えられた頭にクシャッと手をやって、視線を外される。

この髪を触る仕草、何度か見た気がする。

恥ずかしかったり、気まずい時にそうしていたような…。


「余計に混乱させるようなことして…すいません」

「……」

「でも今言ったことも、したことも、全部俺の本当の気持ちです」

「うん…」


わかってる。
もうね、痛いほど伝わってるよ。
ありがとう、って。
優くんの気持ちに応えられるまで待ってくれる?って。
そう言えたらいいのに。


こんな私で、ごめんなさい……。




「帰ります。ゆっくり休んで下さい」

「色々ありがとう」

「ちゃんと薬飲むんですよ」

「はい」

最後に少しだけ冗談めいた口ぶりをして、優くんは部屋を出て行った。



すぐに押し寄せる、後悔と罪悪感。
優くんに対しても、てっちゃんに対しても。
同じように、自分自身への嫌悪感も。



何してるの……
もう、悩むことなんて許されない……
私、てっちゃんを裏切った……



思い出すのはてっちゃんのことばかり。
柔らかい微笑み。
イタズラっぽい笑顔。
拗ねたような幼い顔。
私を抱き締めてくれる、優しい二つの腕。

あんなに温かな人を、私は信じ抜けなくて、優くんの優しさに逃げた……。




てっちゃん、今頃どうしてる?
北海道の夜は、もう寒い?


声が聞きたくなる。
聞きたくなるけど、今のこんな私じゃ…繋がることなんてとてもできない。



その時。
静かな部屋の中に響いた、LINEの通知音。


嘘……
まさか……


震える手でメッセージを開いてみる。



[誕生日おめでとう]



絵文字もスタンプもない、文字だけのメッセージ。
でも、てっちゃんの声で確かにそう聞こえる。



「…っ、てっちゃぁん…」



文字は滲んで見えなくなっていく。


私とてっちゃんの向かう先は、どこなんだろう―――。



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