第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「そんなこと昼間から考えてるの、てっちゃんくらいです!」
「男はみんな考えてるよ」
「そんなバカな」
呑気な奴。
大将の好みかは知んねぇけど、梨央は綺麗だし、いい体してるし。
ムラムラする可能性だって十分あるんだからな?
「鉄朗くん?ご飯食べようよ」
「……」
卑怯だぞ…。
こんな場面で名前呼んでくるとか。
心でそう思うものの、俺の名を口にしながら笑う梨央が可愛くて…
俺は促されるまま、夕食をリビングへと運んだ。
「てっちゃん、いつも美味しそうに食べてくれるから、嬉しい」
「いや、だって美味いし。いいお嫁さんになるよ、梨央は」
何の気なしに言った台詞に、梨央の頬が染まった。
それから俺を伺うように、小さな声を出す。
「……貰い手、いるかな?」
「いるよ。目の前に」
「……」
「あ!今のは違うからな!いや、違わねぇけど!」
「…何?」
「だから、 "プ" で始まるやつにはカウントすんなよ?そういうのは、ちゃんと然るべきシチュエーションでって男は考えるもんなんだからさ。そもそも告白だって、コンビニの駐車場なんかでするつもりじゃなかったんだぜ?」
梨央との将来のこと。
つき合い始めた時からずっと考えていて…。
梨央しかいないって、時間が経過すればするほど、その思いは強くなっていく。
プロポーズは、梨央が一生の思い出になるようなシチュエーションで。
―――そう、決めていた。
「じゃあ今のは何?」
もちろん嘘でも冗談でもないけど、プロポーズにはカウントして欲しくない。
苦し紛れに絞り出した答えは…
「今のは…予告」
「予告…。ふふっ、そっか」
顔を綻ばせて笑う梨央を見て、また実感する。
一緒に飯食いながら、喋って笑って。
こんな当たり前の日々を、一生梨央と繰り返していけたら……そう願わずにはいられない。