第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
*黒尾side*
そわそわしながら、歩き慣れた道を行く。
今頃、梨央と大将は何してんのかな?
まだ二人でいるんだろうか?
一緒に飯でも食ってたりして。
あのヘビ野郎、まさか梨央に手ぇ出してねぇだろうな?
まあ、会う約束は真っ昼間のショッピングモールだっつってたし、俺の考え過ぎだとは思うけど。
終始、そんなことばかりが頭を占めていた。
我に返っては、仕事に集中しろと自分自身に突っ込んで。
今日は一日がとんでもなく長く感じた。
もうすぐ辿り着く梨央の家。
梨央が休みの日は、いつも夕飯を作って待っていてくれる。
休みが合わない俺たちは、お互いの家を行き来するか、職場のそばで飯食うか、南さんの店で一緒に酒を飲むか。
二人会える時間は、いつもそんな感じ。
ふと、鞄に忍ばせた小さな箱の存在が頭を過る。
俺が勝手に選んだものだけど…
気に入ってくれるだろうか。
「お疲れ様」
「おっす」
「疲れたでしょ?すぐご飯出せるからね」
笑顔で迎えてくれた梨央。
風呂を済ませた後なのか、ノーメイクで髪をひとつに括って、Tシャツとゆったりしたデニム。
完全にリラックスモードだ。
「あ、お風呂先のがいい?沸いてるけど」
「ううん。飯もらう」
「そう?今日はサンマにしたよ!好きでしょ?あとね、栗ご飯」
「いいねぇ」
スリッパに足をいれてリビングまで進み、スーツとネクタイから解放される。
キッチンでご飯を盛り付けてる梨央が目に入り、その隣へ立った。
「うまそー」
大根おろしが添えられたサンマと、ひじきの煮物、漬け物、具沢山のけんちん汁。
こういう和食が一番ほっとする。
「運ぶの手伝う」
「ありがと。あ、ビール飲むなら…」
梨央の声を遮って、柔らかな体を腕の中に閉じ込めた。
「疲れた…」
「ふふっ、お疲れ様」
「疲れたのは、仕事もだけどさ…」
「うん?」
「今日、あいつに…変なことされなかった?」
「変なことって?」
「おっぱい触られたり、ラブホ連れ込まれそうになったり」
「どんな妄想!?されてないよ!」
可笑しそうに肩を震わせて笑ってやがる。