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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】



「え?ジムは?」

「あれ嘘です」

「ええ!?」

「お腹空いてません?」

「……空いてる」

「じゃあ決まり。行きましょうか」


優くんは駅とは逆方向に進路を変えると、私を促すようにそっと背中に手を添えた。

時々口が悪くなるし、毒も吐く優くんたけど…
でも、やっぱり基本的には紳士的。
今だって、エスコートするみたいに触れただけで、彼の手はすぐに離れていった。
言葉では強引なこと言ってくるけれど、あの酔っ払った夜以外、下心のある感じで体に触ってきたことはない。


私に好意をもってくれてるのは嬉しい。
でも…
正直優くんにその気持ちがなかったら、構えることなくもっと仲良くできたのに…とも思う。
こんなこと考えてるの、酷いよね…。






歩いて数分の場所にある公園。
小さな子どもとお母さんがいるくらいで、人なんて全然いない。

私たちは並んでベンチに腰掛けた。
優くんは、二人の体の間に作ってきてくれたお弁当を広げてくれる。


「わ…美味しそう!」

炊き込みご飯のおにぎりに、卵焼き。
里芋の煮物、鶏の唐揚げ、いんげんのお浸し。
お弁当箱の隙間を埋めるのにプチトマトやブロッコリーも使ってて、何か女子力高い。

「これ全部今日作ったの?」

「はい。……と言いたいとこですけど、唐揚げと卵焼きだけ。あとは昨日の残りで…すいません」

「そんな、全然!美味しそう!」

お店では洋食を作ってる優くんしか知らないから、目の前に並ぶ家庭料理が新鮮。

「どうぞ」

割り箸とおしぼりを受け取って、改めて両手を合わせた。

「いただきます」

里芋の煮物に手を伸ばして、口に入れる。
味が染みてて美味しい。
味付けも、濃すぎず薄すぎず。
お腹が空いてたのもあるけど、箸が進む。

「どれもすごく美味しい。優くんすごいね。やっぱりプロだなぁ」

「料理も俺のセールスポイントですからね。覚えといて下さい」

「もう、すぐそういうこと言うんだから…」

「でも…これはちょっとズルかったかなって思ってます」

箸を置き、少しバツが悪そうに私から視線を逸らす優くん。
言ってる意味がわからなくて、私は黙って続く言葉を待った。


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