第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「何かユメの奴、友達のピアノの発表会見に行くらしくて。そこに着ていく服が欲しいみたいなんですよ」
「へぇ。じゃあお洒落なの選ばなきゃね」
「頼りにしてます」
女の子だもん、お洒落に興味あるよね。
私も小学生の頃、可愛い洋服買ってもらうの楽しみだったな。
少しヒールのある靴なんかもおねだりして。
お母さんは簡単には買ってくれなかったから、お父さんにこっそり頼んで…。
「……」
お父さん、女の子の服買うのに付き合うなんて、退屈だったかな?
しつこくおねだりすれば買ってくれたから、もしかして、後でお母さんに怒られてたのかもしれない。
「梨央さん、ぶつかりますよ?」
ふいに優くんに腕を引かれる。
ボーッとして、すれ違う男の人にぶつかるとこだったみたい。
今、こんな昔のこと思い出さなくていいのに…。
「あ、ごめんね…。どんな服がいいか考えてた」
「そうですか」
「ねぇ、優くんこの後どっか行くの?」
会った時から気になってたんだ。
優くんの肩には、ボストンバッグが掛けられてる。
私がそれに目を向けてるのに気づくと、ああ、と小さく頷いた。
「ジムに行こうと思ってて」
「へえ!ジム通いしてるんだ!」
「体動かすのは好きなんで。梨央さん運動は?」
「あはは。私は全く。運動苦手だし…」
「ああ、何か鈍くさそうっすもんね」
「そういうこと言う!?」
急に毒吐くのやめてくれないかな!
綺麗な声と穏やかな喋り方だから、衝撃が倍だよ!
何か優くんには、いっぱい感情を掻き乱されてる気がする…。