第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
目的の建物の中に入った私たち。
空調が効いていて、室内だと少し寒いくらい。
入り口の案内図で子供服売り場を確認して、エレベーターに乗った。
「俺、休みの日の昼間にこうして誰かと会うの、すげぇ久しぶりかも」
「あ、私もだよ。友達とは休み合わないもん」
「そうそう。会うにしても、夜向こうの仕事が終わってからで。一人で過ごすのが当たり前なんですよね」
「うん。気ままだけど…でもたまに寂しくなる。誰かと出掛けたいなーって」
人に気兼ねはいらないけど、いつも一人っていうのはちょっと寂しい。
てっちゃんとも休みは合わないから、お互いの家を行き来したり、お店で会うのがデートみたいなものになってる。
「もし俺と付き合ったら、休みの日はいつも一緒にいられますよ。寂しい思いもさせません」
「…………」
「固まらないで下さい」
もう……。
どうしてこの人は、こんなことをサラリと……。
「俺と付き合う利点は、知っといてもらわないとね」
「利点とかで付き合う人を選んだことはないんだけど…」
「ああ、梨央さんはそんな感じ。…あ、着きましたね」
優くんとそんなやりとりをしていたら、子供服のあるフロアへ到着。
最近の子供服って、とっても可愛くてビックリする。
私の子どもの頃なんて、こんな凝った作りのものなかった気がする。
それか、買って貰えなかっただけかな?
「ワンピースなんてどう?」
「ああ、可愛いですね」
店頭に並んでるのは、秋物らしい深みのある色の洋服。
それから、秋から冬に向けてニットも揃ってる。
「白とか可愛いね」
「あー、でもあいつよく飯こぼすからなぁ。汚して終わりかも」
「なるほど…」
染みになったら、すぐに着られなくなっちゃうよね。
店内を見渡してみると、今度は鮮やかな黄色のニットが目に入ってきた。
ひまわり柄の浴衣がよく似合ってたユメちゃん。
黄色のこのニットも、似合いそう。
「いいですね、それ。ニットなら冬も着られるし」
「ほんと?これに合うようなスカート選んだらどうかな?」
「どんなのなら合うんだろ…。ニットが無地だから、チェック柄とか?」
「ああ、良さそう!」