第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
それから二週間後の定休日―――。
今日は優くんとの約束の日。
待ち合わせは、大型ショッピングモールのある駅前。
約束の時間より15分早く到着した電車から、ホームへ降り立つ。
ここ数日は昼間でも涼しく過ごしやすくなってきた。
今日が休日なら、どこへ行っても人でごった返してるだろう。
でも幸い、そんな心配はいらない。平日の午前中ということもあって、人の行き来は程々だ。
平日休みのいいところはこういうところ。
どこへ行っても混雑を避けられる。
その代わり、漏れなくお一人様で過ごすことにはなるけれど。
改札を抜けてショッピングモール方面の出口へ歩いていくと、見慣れた後ろ姿を見つけた。
私も早く出てきたつもりだったんだけど……。
「優くん」
「梨央さん。こんにちは」
「こんにちは。ごめんね、待たせちゃった?」
「いえ。俺から誘ったのに梨央さん待たせるわけにはいかないんで。早く来ました」
「そんな気遣わなくていいのに」
優くんは黙って私を見たまま。
「ん?何?」
「本当は早く会いたかったから、ですよ」
「……」
「じゃあ、今日はお願いしますね」
「うん…」
相変わらずのストレートな口説き文句。
暑くもないのに、顔に熱が籠る。
優くんて、絶対モテるよね?
顔はスッキリしたイケメンだし。
今日着てる服装だってそう。白いTシャツにジャケット、細身のボトムス。
こういうシンプルな格好って、背が高くてスタイルのいい人だからこそしっくりくるんだよね。すごく似合ってる。
女の子が喜ぶような台詞もわかってるみたいだし。
どうして、わざわざ私なんか……。