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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】



「鉄朗…くん…?」

「はい」

「鉄朗くん」

「はいはい」

ただ名前を呼んでいるだけなのに、何だか嬉しそう。
絡んだ視線はほどかれそうにもない。

「呼び方…変えよっか?」

付き合い始めてから、私のことを呼び捨てにしてくれてるように。
てっちゃんのことも、恋人っぽく呼んだ方が嬉しいのかな。

「変えなくていいよ。でも、時々名前で呼んで」

「時々…でいいの?」

「不意打ちで呼ばれると、すげぇ嬉しいし、ドキッとするから。それを楽しみにするってのも、アリだろ?」

「それ…使いどころ間違えたらいけないやつ?」

「ぷっ…。間違いなんてねーから、大丈夫」

てっちゃんは小さく吹き出して笑うと、微かな音をさせて私のおでこに口付けた。

「好き…。……テツ…ロウ…」

「ブハッ!何でカタコト?」

「呼び捨ては…ちょっと緊張するもん」

「かわいー。……俺も、好きだよ」

私たちは、もう一度だけゆっくりと唇を重ねた。
こうなってしまうと、これだけじゃ足りなくなる。
本当はもっと深いところまで求めたいし、求めて欲しい。
呼吸が乱れても構わないから、熱い舌を私の中で沢山……。

ところが、淫らな思考を遮断するようにてっちゃんの唇が離れていく。


仕方ない。
だってここは職場の厨房で、扉一枚隔てた向こう側には、南さんたちがいる。
この辺りで我慢しておかなくちゃ。

「そんな目で見んな」

「……どんな目?」

「物欲しそうな目」

「だって…」

「俺もすっげ我慢してるから、梨央も我慢して」

ちょっと心外。
てっちゃんにこんなことを諭されるなんて。

「乱れてる梨央の姿、万が一にもあいつらには見せたくねぇの」

「……うん」

「オカズにされちゃ堪んねぇし」

「……てっちゃん下品」

ふわふわ浮かんだままの疼きを、取り合えずは無理矢理押し込める。

てっちゃんは氷の入ったグラスを手に取った。

「じゃ、俺先戻るわ」

「うん」

二人一緒だと、何してたんだ?ってまた弄られそうだし。
火照る熱を冷まし、デザートとコーヒーを準備して…
私もまた、みんなのいるテーブルへと戻ることにした。


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