第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「まあ、無理にとは言わねぇけど。黒尾クン、女の一人も掴まえてられないんだねー。梨央さんが俺になびきそうで怖いのかな?」
「はぁ?梨央は俺に惚れてるんで。なびくわけねぇし」
「じゃあ問題ないよな?付き合ってもらっても」
「梨央がいいって言うなら、いんじゃね?」
私を置き去りにして、淡々と話を進めるてっちゃんたち。
プレゼントを選びに行くだけのことなのに、どうしてこんなに揉めてるの?
「黒尾さん、珍しく挑発乗っちゃいましたね」
「我が弟ながらヤラシイわ。黒尾くんの性格知り尽くしてる感あるよね」
「さて。梨央さんはどうするんでしょう?」
「彼氏以外の男と出掛けるのを、良しとするのかしないのか…」
外野二人は何実況してるの?
四人ともそんな目で私を見ないでよ…。
出掛けるって、プレゼント選ぶだけでしょ?
てっちゃんだって、ああ言ってる。
それなのに、拒否した方が優くんを意識してるみたいじゃない?
「……いいよ。付き合う」
「どうも」
ゆるりと口の端を上げる優くん。
眉をひそめたままのてっちゃん。
哀れみの目でてっちゃんを見る赤葦くん。
あれ……?
私……間違った?
てっちゃん、本当は嫌…なのかな。
やっぱり断った方が……
「梨央さんのセンスなら確かだろうし、ユメも喜ぶだろうなぁ。ね、兄貴?」
「ん?うん、そうだな」
こ…断り辛い…。
てっちゃんとは目が合わないし…。
間違った返事をしてしまったのだと気づいても、もう後の祭り。
「南さん、ちょっと氷もらっていいっすか?」
「ああ、いいよ。厨房から適当に持ってきて」
「はーい」
いつもどおりの口調で南さんと言葉を交わして、てっちゃんは席を立つ。
厨房に入っていく後ろ姿を視界の端で見ていると、赤葦くんが耳打ちをしてきた。
「行ってきた方がいいんじゃないですか?」
「え?」
「アレたぶん、しょぼくれモード(黒尾さんバージョン)です」
「……しょぼくれ?何?」
「イジケてるってことです」
「……」
「早い方がいいと思いますよ」
「……うん」
赤葦くんに後押しされ私も席を立つと、てっちゃんのいる厨房へと向かった。