第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「俺はじゃれ合いに来たワケじゃねぇっつーの!」
「は?何か用デスカ?」
ひとまず落ち着いたと思ったけど、二人ともケンカ腰なのは変わらない。
「今度梨央さん一日貸してよ」
「……ハァ?」
……?
ちょっと…
言ってる意味が……。
「わけわかんね。つか、いつから梨央のこと名前で呼ぶようになったの?」
「忘れた。名前呼ぶのがそんなに気になんの?」
「別にぃ?」
優くんに告白されたっていう事実があるからかな…。
悪いことなんてしてないのに、勝手に鼓動が早くなる。
「もうすぐ姪っ子の誕生日なんだけど、梨央さんにプレゼント選ぶの付き合って欲しいんだよね。女の子の欲しいものなんて見当つかねぇし」
「あー、そういやユメの誕生日もうすぐか!」
南さんも思い出したように声を上げる。
私の頭に、優くんの隣に並んだ人懐っこい笑顔が浮かんだ。
ひまわり柄の浴衣が似合ってて、可愛かったな。
「ユメちゃんっていうんだ。何歳になるの?」
「今度八歳だったかな」
「へぇ!可愛い子だったよね」
思わず頬が緩む。
すると、てっちゃんが不機嫌顔のまま私に目を向けた。
「何?会ったことあんの?」
「チラッとだけ。花火の日、優くんに携帯拾ってもらったって話したでしょ?その時、一緒にいたの」
「ふーん」
お誕生日かぁ…。
八歳の女の子って、何貰ったら喜ぶんだろ?
おもちゃ?ゲーム?洋服?
最近の子はオシャレだし、アクセサリーとか?
「付き合ってくれます?梨央さん」
「え…うーん、でも……」
そりゃあ、私でお役に立てるならって思うけど…。
二人で会うなんて、てっちゃんきっと気を悪くする。
「あー、黒尾が気になります?デートとかじゃねぇのに反対するタイプの男?面倒くさいっすね、そういう余裕ない彼氏」
「ハァ?誰が余裕ねぇって?」
またもや一触即発。
睨み合う蛇と猫……。
「挑発ですよね、アレ」
「だね。黒尾くんて、優とは小学生みたいなケンカするよね」
赤葦くんと南さんのヒソヒソ話が聞こえてくる。