第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
優くんの肉食発言。
真っ直ぐ気持ちをぶつけられるのは、正直嫌な気持ちにはなれない。
でもね……
こんな風に想いを向けられても、何て言ったらいいのかわからなくなる。
「そんな顔しないで下さいよ」
「え?」
「梨央さんは、自分の気持ちに正直でいてくれたらそれでいいんで。あ、そういえば。今度黒尾がここに来る日とか、わかります?」
「今夜来るって言ってたけど……」
「そうですか。楽しみにしときます」
……楽しみ?
優くんがてっちゃんに会うのを?
何か怖いんだけど……。
意味深に微笑んだ優くんは、今度こそ仕事に集中し始めた。
彼の言葉の意味はわからなかったけれど、私もそれに習って作業を始めた。
そして、その夜。
約束していたとおり、店を訪れたてっちゃん。
今日は赤葦くんが一緒だ。
二人で食事してお酒も飲んで、時刻は閉店時間になる。
でもてっちゃんが来る時は、閉店してからが長い。
南さんも同席して、ちびちび飲みながら喋って過ごすのが常。
二人きりじゃなくても、少しでも同じ空間にいられるのは、私としても嬉しかったりする。
てっちゃん、赤葦くん、それから南さんが囲むテーブルにお邪魔して少しだけお酒を飲んでいると、ふいに優くんがやってきた。
「よお。いらっしゃい」
「……おう」
「座っていい?」
「ドーゾ…」
当たり障りなく声を掛けられて、てっちゃんは怪訝な顔をしている。
「赤葦くん、これ弟の優」
「弟さんですか。初めまして。赤葦です」
南さんの紹介を受けて、赤葦くんと優くんも顔を見合わせた。
「こんばんは…。アカアシ…?…あ。梟谷のセッター?」
「……はい。どこかでお会いしました?」
「いや、俺、戸美の主将だったんだけど。黒尾と同い年。ソウダヨネ…覚えてないよね…」
「すいません…」
「ぶひゃひゃっ!ざまぁ!!」
「るせー!どらネコ!!」
ギャアギャア騒ぐ二人は、仲が悪いようには見えない。
悪友?って言うのかな。ケンカするほど仲がいい、みたいな。
本人たちは断固否定するけど。