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日章旗のデューズオフ

第10章 【漆】実弥&悲鳴嶼(鬼滅/最強最弱な隊士)



眦を緩めながら断ると、彼もハッとしてから同意し、短く謝罪を口にして何度か頷く。良友のこういう素直なところが憎めないんだよな。手を下ろした時、再び鉄穴森さんが火男面の下縁を摘んで肩を揺らした。
「謝る必要はないですよ。とても貴重なお話を聞けましたので寧ろお礼を差し上げたいくらいです。やはり、自身の打った日輪刀がどのような人物に扱われているのかを知る機会は必要ですから。貴方のことは特に気に掛けておりましたし」
「……左様で」
「さて、名前君の武勇伝は後ほどじっくりお伺いするとしまして。刻も迫っているようですので、そろそろ日輪刀をお渡ししましょう」
「あ、はい。お願いします」
「ご依頼頂いた武具の品々も完成しましたので、お持ちしておりますよ」
「随分とお早いですね」
「実は刀鍛冶の里が襲撃された後、時透殿に招致され、彼の邸に鍛治場を併設しているのです。ですから依頼を受けて取り掛かるまでが迅速に済み、完成から納品までも大変速いというわけです」
「なるほど」
鉄穴森さん越しに見えていた風呂敷包みや桐箱は紛う事無く俺宛らしいと分かって溜飲が下がる。悲鳴嶼は日輪刀の修復だけを依頼したとばかり思っているようだが、実際は新たな武具も幾つか発注しておいたのだ。差し詰め、この大荷物は隠として後藤が運んだ、といったところか。そうじゃないと彼が居る理由が不明瞭だったしな。
(さて……)
日輪刀の原料でもある、猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を使用した無反りの脇差に始まり、分銅鎖、峨嵋刺などの暗器、精巧な絡繰細工が施された小手など様々なものを頼んでおいたので、ちょっと浮き浮きしている。風柱殿はまた臍を曲げるかもしれないが、面頬も新たに拵えて貰った。
此度の面頬は黒漆塗鳶型総面といって、顔を完全に覆い隠す造りである。本来であれば目元が刳り貫かれている為に眼窩周辺は露出しているのだが、今回特注した総面はひと味違う。
刳り貫きがなく、表面には猛禽類独特の鋭い眼差しを想起させるような彫り装飾が施されているだけである。しかし、俺からの視界は極めて良好。正面からじっくり覗き込まれても相手からは何も見えない特殊な仕組みだ。

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