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日章旗のデューズオフ

第9章 【陸】玄弥&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)



霞柱殿との会話は長く続かない事が多い。柱の中でも特に接点が無いという理由もあるが、彼の発言は千差万別とある言葉の中から態々取り分けて棘の有るものを選択しているのではと勘繰ってしまうほど辛辣で、辟易した俺から早々に切り上げてしまうせいだ。
そんな俺の敬遠する気配を察してか、彼も必要以上に話し掛けてはこなかったし、今のように淡々とでも言葉を交わせている事が些か信じられない。ましてや気を使うような物言いなど初めて身に受けたのでは無いだろうか。
「っと。どうぞ」
「ありがとう、岩注連さん」
「……」
一枚引き下ろした座布団を霞柱殿へ差し出すと、受け取る間際にさらりと礼を言われた。しかも敬称付きで呼ばれた。これが青天の霹靂か。良く見れば表情は、憑き物が落ちたかのように穏やかな様子。瞳の輝きも増している気がした。これは本格的に人が変わったらしい。理由は分からないけれど。
「なに呆けてるの? 早く残りを敷きなよ。愚図だな」
「……」
前言撤回だ、こンの……。柱じゃなかったら細切れにしてやるのによ。見直した途端に此れだから霞柱殿の事は何時までも好きになりきれない。玄弥の方が未だマシな性格じゃねぇのか。
それでも長いものに巻かれるのが俺の性分だ。歳上の余裕を持って苛立ちを押さえ込みながら――既に苛立っている時点で情けない自覚はある――静かに詫びると、高灯台と並行に座布団を並べていく。噫、頭痛が酷くなってきた。

***

「あ! 名前く~んッ!」
「姐さん、お久しぶりです。刀鍛冶の里でのご活躍、俺の耳にも届いております。大きな怪我もなくご無事で何よりです」
「きゃ♡ ありがとう、嬉しい♡」
次に広間へ脚を踏み入れたのは姐さんこと恋柱殿だ。その後ろを静かに追従してきたのは蛇柱殿。敬服の念を込めて伊黒大兄とお呼びしている。彼は俺の姿を見留めると、鏑丸を介して友好的な挨拶を寄越してくれた。舌をちろちろと覗かせる白蛇様が宙を伸び、俺へ向けて頭部を上下に軽く揺らす。この動きこそ大兄の『挨拶』に他ならない。

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