第16章 【拾参】時透&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)
殊更に好戦的な二人へ対して眇目しながら嗤笑を飛ばす生意気な態度は、部下としても人としても過剰な挑発行為だという自覚は有る。しかし、高揚感のまま無理やりにでも己を鼓舞し続けなければ、鬼殺隊最強の悲鳴嶼を相手にするまで精神力が保つか分からない。今でこそ俺を慮って消極的で居る杏寿郎さんも、俺に覚悟が有ると判断すれば攻勢に転じるだろう。その窮地に成って気力を枯渇させていては、元も子もないのだ。
「霞の呼吸 肆ノ型──」
「風の呼吸ッ! 捌ノ型ッ!」
気丈に振る舞った俺の、蝋燭の火を吹き消すような短い吐息を合図にしたのは偶然か、風系統を操る二人から鋭い殺気を含む気魄が湧き起こり、思考の余白さえ塗り潰さんとする波濤が雪煙の残滓を割り裂いた。迫撃の予兆が焦眉之急を告げていく。呼吸を整える暇さえ与えて貰えないならば、肺腑を空にしたまま迎え撃つまで。
(『移流斬り』と『初烈風斬り』、どちらも素早く距離を詰めて斬り付ける技……)
順手で握る木刀を瞬間的に手放し、指先で弾いて逆様へと反転させる。刃先が真下を捉えた角度で透かさず握り直すと、身体の正中へ翳した。一見すると無防備でも逆手慣れした俺にとっては絶対防衛の構えである。
正にそこへ俺の胴体を横薙ぎに寸断しようとする二振りの太刀筋が叩き付けられる。衝突した刹那、舞い降る粉雪が円状に弾け飛び、鋼が鍔迫り合う『鳴き』の音とは異なる、生の真竹が焼けて爆ぜたような、生理的な恐怖を煽る音が周囲一帯へ谺した。
衝撃を逃がして受け流す事も出来たが、目視しただけでは得られない、我が身に受けてこそ記憶できる技の機微というものもあるだろう。敢えて前腕への致命的な痺れを犠牲に、二つの型を一気に『仕込んだ』。
「ッ……流石だね、名前さん……ッ」
「柱の全力を同時にッ、受け止めんじゃねェよ糞がァァッ」
「兼ねてよりお望みの本気の手合わせじゃないですか。つれないこと言わないで構って下さいよ、最後まで」
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