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日章旗のデューズオフ

第16章 【拾参】時透&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)



「ッなん──」
「ッ」
「むう!」
「──ッ」
耳を聾して気を窶す轟音、太陽が堕ちたような閃光、立位すら困難な爆風、膚を裂く砂利の飛散、夥しい爆煙──それらを知覚する間もなく真向から浴びた四人は、咄嗟に弱所を庇う事しか出来ない。
膨張する大気が鼓膜を叩き、遅れて閃光が網膜を焼く現象に対して、普通の人間は為す術なく甚大な被害を受けるが、それを最小限に留めようとする生体防禦反応が反射神経だった。
人の反射神経は本当に優秀だ。五感への過度な刺激は筋肉が不随意運動を起こして守るのが当然であるし、その刻を利用するよう訓練された余程の莫迦者でない限りは、己の命を守る行動に出るものなのだから。
(──悪く思うなよ)
多勢に無勢という、俺にとって不利な戦況ならば、足掻けるだけ足掻いて有利な盤面へ引っ繰り返せば良いだけのこと。いっそ大胆に狡くいかなければ勝機は無いだろう。この粉塵爆発の悉くは須らく俺の味方だ。
(先ずは、三人)
爆ぜる煙の内側で炭化した得物を閃かせる。抜刀の斬り付けを霞柱殿の鳩尾へ、手首を翻して残心の払いを風柱殿の腹部へ。そして突出した二人と同じように頭部を庇う杏寿郎さんの膝裏へ、納刀の戻しの力を叩き込んだ。その直後に木刀は内部亀裂への衝撃が致命的となって砕け散るが、想定通り故に尾を引かない。
(──最後は)
懐中時計が脹脛へ移動したと泣き言を宣う暇はない。辛うじて機能する前身頃を掻き分けて峨嵋刺を一本抜き取りながら、仁王立ちした悲鳴嶼へ直ぐさま飛び掛かった。飢えた獣も斯くやな形振り構わない醜い姿が、文字通り煙に巻かれていて本当に良かったと心から思う。
(────)
相貌を守るように翳された太い腕を掻い潜って煤汚れてしまった頚の念珠へ指を引き掛けると、振り子の遠心力で巨躯の背後へと瞬時に回り込み、不動の山岳を思わせる背へ縋るように抱き着いた。
彼の頚へ左腕を巻き付けて裸絞に持ち込みたかったが、爆風を受けても揺るがない体幹を有する悲鳴嶼には無意味だったようで不発に終わる。まぁ本命は、血潮の管が皮膚に透け浮く顳顬へ峨嵋刺の切先を静かに添え当てる方なのだから、問題ない。

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