第16章 【拾参】時透&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)
「雷の呼吸 壱ノ型──」
古武術の『縮地』を彷彿とさせる、物理法則を無視した足捌きから成る抜き付けは、忍に伝わる単純な居合抜刀術とは全く異なる攻撃だった。霹靂一閃とは、抜刀時の斬り付け、血払いの残心、納刀時の斬り付けによる三段階一括りの構成なのだ。
この縮地の歩数が増えれば連撃が効き、踏み込みが深く、溜め動作が長ければ速度が増す。しかも間合いに居る敵を、納刀する瞬間まで斬り伏せ続けられる柔軟性まで秘めている。或いは人の目に使用者の動きが捉えられたとしても、その緻密な技巧の視認にまでは至らないだろう。
どく、どく、どく。切り結ぶ、太刀の下こそ地獄なれ、踏み込みいれば、ここは極楽──とは誰の金言だっただろう。敵のさなかへ果敢に飛び込むこの型は正に、一対四の不利な模擬試合を目の前に怖気付いていた俺の背中を、力強く、且つ無責任に押した。
(──霹靂、一閃ッ!)
道理を超越した速度で踏み込み、一気に木刀を振り抜いた瞬間、手元から紫電が奔る。玉響の幻ではない本物の紫電である。木刀は電気を通さない絶縁体だが、極限速度で大気との摩擦を加えれば強烈な熱と静電気を帯びる。代わりに表面は一瞬で焼け焦げるし内部へ向かって亀裂が入ってしまうから、そう何度も出来ない荒業だ。
その風圧によって周囲を舞う粉雪は激しく衝突し合い、膨大な電荷を蓄えていく。雲の中で雷が発生するのと同じ原理だ。その仮想雷雲の中へ燻った木刀を突入させると、電位差が忽ち増していった。
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焦げた木の臭いが、静謐な雪の香りを塗り替える。生じ続ける摩擦熱と放電を始める静電気が一点に重なって、粉塵のひとひらに触れた刹那、網目状の火花が連なり広がって往き、やがて。
抜刀を開始してから一弾指……一秒にも満たない微かな刻で、周囲一帯は大きな爆発を起こした。所謂、粉塵爆発と呼ばれるものである。
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