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日章旗のデューズオフ

第13章 【拾】炭治郎&伊之助(鬼滅/最強最弱な隊士)



「よう、美少年! お前は闇雲に斬りかかって来ずに確実に狙いを定めた方が勝機がある! 一番初めが一番良かったぞ!」
「るせぇッ!! 俺様に指図すんなッ!!」
「ッはは、次は正面から頼む! 空蝉に仕込めねぇ!」
笑顔で紡ぐ軽薄な挑発に、綺麗な相貌が見事に怒気で歪んでいく。まぁでも、口では反抗しつつ助言を耳にした途端、下半身へ体重を乗せて俺の出方をしっかり伺い始めたのだから、素直じゃないよな。

***

半刻が経過しても力量の天秤は傾かない。頚以外の全身を白線と蚯蚓脹れまみれにしながらも喰らい付く伊之助とカナヲ。それを難なく退けると、同じく満身創痍の竈門が時間差で斬り掛かってくる。当初の予想通り、"こうなった"。
彼の有名な織田信長公が発案したとされる三段撃ち戦法――三隊の鉄砲隊を縦に配列し、撃った小隊から後退、控えの小隊が前進して直ぐさま発砲、それを繰り返すことで半永久的に撃ち続けられる画期的な戦法だ――に似ている戦い方は、この状況で一番勝算が有る事は確かだが、頼り過ぎていて心配になる。
ここから形勢が逆転するのは先ず無い。恐らく三人とも好機を逃して決定的な手段に窮しているのだろう。或いは試行回数を重ねて確率の収束を待っているのかもしれないが、実際は分からない。
(本当に僅かな隙を狙っているのなら……誘うか)
目の前の撒き餌に夢中になってしまう無垢で雑魚な鬼はさて置いても、世の中には一層狡猾で残忍な鬼も居る。鬼舞辻無惨に近ければ近いほど知能が高くて小賢しくて、人間の繊細な精神を愚弄・翻弄する術に長けている者共の事だ。
(……――)
――そういった鬼の前でも通り一辺倒で浅はかな攻撃をしてきたのか、竈門炭治郎。違うよな。無限列車で、遊郭で、刀鍛冶の里で、戦いの中で成長してきた筈だよな。お前は限り限りの局面に立たされる度に、際どい分水嶺で正しい峰を選び取っては邁進してきた。今もそうしろ、俺が作った僅かな隙を掴み取れ。

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