第13章 【拾】炭治郎&伊之助(鬼滅/最強最弱な隊士)
だが直ぐに苦悶の表情を浮かべ、結局は耐えきれずに思い切り肩から倒れ込んで激しく咳き込んでしまう。俺の鞘は前提として武器でもあるから決して軽くない。彼女の体型で彼程耐え忍べたのならば及第点だろう。
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日輪刀の縁金と鞘の栗形を熨斗結びで繋ぐ下緒は本来、鞘側だけに結び付けられた組紐のことを指すが、飛び道具を駆使する技術が有る俺だからこそ、今の形に結び変える方が有効的であった。
勿論、鉄穴森さんも了承済みの事なので、日輪刀の手直しを依頼する度に、切り離し難い特殊な素材の組紐を拵え直して頑強さの底上げを図ってくれている。だから多少無茶な使い方をしても千切れたりしないし、ましてや切ってしまおうという他者の思惑も通用しない。
本当だったら新たに鍛刀して貰った脇差の栗形と結び付けて、忍の下緒七術がひとつ『旅枕』の形状を作り出し、二節棍のように扱う事を理想としていたのだが……後藤から現物を引き取るまでは一先ず現状維持だ。
「ッふう。おら、自分達の土俵に俺を引き摺り込めて気が済んだかよ後輩達。いい加減、空蝉の為に次々と型を連発して欲しいんだがな」
苦しみ悶える三人を後目に、羽織と着流しの砂埃を払いながら立ち上がる。長くなった前髪も砂で白くなっているようだったから手櫛で掻き上げて視界から外す。思いのほか今の丁丁発止に昂っていたみたいで、汗でしっとりと濡れていた。
最低限の身形を整えるのと同時に、釣ずる竿が如く日輪刀を振り上げて鞘をグンッと引き寄せた。地面に転がっていたそれは一気に空中を移動して手元まで飛来すると、構えておいた刀身を丸飲みするように喰らい付いて納刀と相成る。
(……)
下緒を鞘へ巻き付け直し、少し緩んでしまった角帯に差し戻した。粛々と先程の手順を逆に辿っていく。もう何度も、今の戦闘形態を確立してから何度も何度も行っている事だから、今更それら一貫した動作をわざわざ目視する必要もなかった。
だからといって視野外から死に物狂いで突っ込んでくる伊之助に気が付かないわけではない。背後からの奇襲はカナヲのお陰で織り込み済みだ。
間髪入れずに彼奴の頭部が到達する位置へ回し蹴りを放つと、硬い毛質の被り物と踵が接触する。そのまま勢いを殺さずに蹴り抜けば、衝撃で猪頭は吹き飛んだ。
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