【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)
第4章 一富士二羽ノ【正月番外編】
さすが我らがエースは違うな、と感心する彼らの言葉に促されて、かさりと開いたそれにはやはり一番・大吉と堂々と書かれており、おおーと一同から歓声が上がった。
「よし、幸先いいね!」
「んじゃ、俺らも開けるか」
「おう……なんか緊張してきた」
「一斉にいくぞ!」
せーの、という掛け声が境内に響いた。
◇ ◇ ◇
「いやあ、英太君はホーント持ってるねえー」
細く縒られた麻縄に御籤箋を結び付けて、しみじみと天童が言う。彼は去年引いたものより良い結果となった吉に、勝負事:よろし、と書かれていたのですっかりご満悦の様子だ。
「こら覚、傷口に塩を塗ってやるな」
「もう噛み付く気力すらなくなっちゃって……英太、大丈夫?」
ともに無難な中吉を引いた大平と朔弥がそろりと瀬見を気遣うが、彼の周りの空気はどんよりと重く澱んでいる。
「連続……二年連続で……なあ、若利」
「なんだ」
「……おまえのくじと交換、」
「それはルールに反する」
正論が刺さるなあチクショー! と目尻に浮かびかけた涙を引っ込めて、瀬見はぎゅうっと麻縄に大凶の御籤箋を結び付ける。そしてパンパンと二回手を打ち、固く目を瞑った彼は絞り出すように声を出した。
「神様仏様、せめて勝負事の『負けと知るべし』だけでも訂正してくれっ!」
「瀬見、ここは神社だ。仏はいないはずだが?」
「ブフォッ!」
「さぁーとぉーりぃーっ」
「ぶっ、やべぇな……腹痛え!」
「はぁーやぁーとぅおー! おまえもかあ!」
普段ならばギャンギャンと騒ぐ彼らを諌める大平も、今回ばかりは顔を背けてプルプルと震えて笑いを堪えている始末。じろり、と怖い顔をした神主に睨まれる気配を察知した朔弥が、ぴゃっと首をすくめた。
陽が高くなり、染み入る寒さが和らぐまで、参道脇にずらりと並ぶ縁日の屋台を冷やかして歩く。右手に水風船、左手に蜜柑飴を持った朔弥が、瀬見の差し出す焼きトウモロコシにかぶりつく。たっぷりのケチャップとマスタードを塗ったフランクフルトを口いっぱいに頬張り、溢れる肉汁を堪能していた山形が、そんな(男主名前)と紙コップに入った甘酒を持つ牛島に目を向けた。
「そういや、おまえらもう帰るのか、早くね?」
「まだ昼だよー、もっと遊ぼうよー、朔弥君」
「ふゅんひひなひゃらはら、」